国内

遅刻に文句言われたら「そんなに待ってたの!」のユーモアで返事

どんな高齢者もユーモアを介しての信頼関係を求めている(イラスト/やまなかゆうこ)

 いつも機嫌悪そうな仏頂面の人、怒って悪態をつく人、とてもユーモアの通じる余地がなさそうな高齢者もいる。

 でも「どんな人にもユーモアはあり、心を通わせたいと思っている」と言うのは、長年ヘルパーとして多くの高齢者と接してきた小谷庸夫さん。なかなか心を開かず、介護スタッフを困らせる高齢者からも信頼されるベテランだ。

「介護現場にはユーモアが必要。高齢者は怒ったり寡黙だったり、いろいろな形で発信するし、認知症が進んでいると、うまく言葉が出ないこともあり、さらにわかりづらい。

 だからこそ表面的な言動を真に受けないで、その人の気持ちをじっくり考え、丁寧に言葉をかけながら探ります。味方だとわかると信頼が生まれ、ユーモアが通じます。たとえば訪問介護に伺った先で『来るのが遅い!』と、すごい剣幕で怒られる。普通なら謝ったり言い訳したりするけれど、私が笑顔で『そんなに待っていてくれたの』と言うと、拍子抜けして彼は思わず笑う。私の投げたユーモアを彼が受け止めたのです。彼には認知症がありますが、目に見えないところでも通じ合える。お互い最高にうれしく最強の絆になるのです」

 ユーモアの大切さを、介護中の高齢者から学んだのだ。

「ユーモアのある関係って余裕が必要なのです。でも介護現場ではつい“すべきこと”を完遂しようと躍起になり、余裕を失いがち。これは家族介護にもいえます。一方、介護される高齢者の方は社会の枠組みから解放され、むしろ余裕を持って世の中を、介護する私たちを見ています。そしてどんな高齢者でも、同じことで笑える関係を求めていると感じるのです。
 ぜひ介護生活にユーモアを取り入れ、心を通わせることに目を向けてください」

【Profile】
 ヘルパーステーション和翔苑 所長・小谷庸夫さん。介護福祉士・調理師。デイサービス勤務を経て、ケアワーカー、調理師、登録へルパーとして勤務。現在は訪問介護事業所所長、介護食の講師、墨田区訪問介護事業者連絡会代表を務め、地域の社会資源を創り上げる会も主宰。

※女性セブン2019年2月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン