現代史家の秦郁彦氏
本郷:思想戦ですよね。
秦:それ以降、天皇家は自分たちが北朝系であることを口にしにくい状態でしたが、二・二六事件のときに皇統問題が浮上します。昭和天皇は反乱軍を討伐しようとしましたが、軍部が相手となると南朝問題を意識せざるを得ない。そこで「私も北朝の末裔ではあるが」と言うと、内大臣が周囲と協議した上で、「皇統が正統であるかどうかは三種の神器をお持ちであるかどうかで決まると考えます」と答えたんです。
【PROFILE】はた・いくひこ/1932年山口県生まれ。現代史家。東京大学法学部卒。大蔵省入省後、防衛大学教官、大蔵省財政史室長、プリンストン大学客員教授、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。著書に『靖国神社の祭神たち』『慰安婦問題の決算』『実証史学への道』などがある。
【PROFILE】ほんごう・かずと/1960年東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。中世政治史が専門。東京大学文学部卒。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。近著に『軍事の日本史』『考える日本史』『やばい日本史』などがある。
※構成/岡田仁志(フリーライター)
※SAPIO2019年4月号