その答えはシンプル。もともと1時間番組のほうが見やすく、視聴習慣が定着するなど、固定客を囲い込みやすいから。「毎週〇曜日の〇時はこの番組」という認識を根づかせ、愛着を抱いてもらうには、“隔週2時間特番”ではなく、“毎週1時間番組”のほうがいいということです。
たとえば、ドラマが録画・保存されがちなコンテンツにも関わらず、いまだ10%以上の視聴率を得られるのは、「毎週〇曜日の〇時はドラマ」という認識や愛着があるからであり、その重要性はバラエティーも同じ。また、ネットの接触時間が長い若年層も、「2時間より1時間以下の番組のほうが気軽に見られる」という短尺志向のため、取り込みやすいのです。
もちろん各局の人々が、それを理解していないわけではありません。『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』が並ぶ日本テレビの日曜夜、『爆報!THEフライデー』『ぴったんこカンカン』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』が並ぶTBSの金曜夜のように、「2時間特番より、1時間番組を2~3本並べるほうが強い」ことはわかっているのに、踏み切れないのです。
そもそも“隔週2時間特番”という戦略は、マーケティングの観点から見ると消極策。冒頭に挙げた「特別感を出すため」「一定の視聴率を確保するため(視聴率ダウン防止策)」「経費削減のため」などの理由を見ても、強者に対抗するために考えられた弱者の戦略であることがわかります。
しかし、2時間特番を乱発した結果、「特別感が薄れた」「隔週放送のため視聴習慣が根づかない」「若年層などの新たな視聴者を取り込みにくい」など浮上の気配はありません。
『ポツンと一軒家』を放送しているテレビ朝日は、もともと日本テレビへの対抗策として連日の2時間強特番化を進めた、言わば先駆けのような存在。そのテレビ朝日が1時間番組に回帰して成功を収めたことが、今後各局に影響を与えるでしょう。
多くの視聴者が「1時間番組を求め、2時間強特番はときどきでいい」と思っているのは明白。各局が「勇気を持って1時間番組に回帰し、かつ、辛抱強く続けていけるか」がテレビ業界やバラエティーの未来を左右するのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。