私が所長を務めるしゅふJOB総合研究所では、働く主婦層(現在の就業状況の如何を問わず、これまでに一度でも働こうと行動を起こしたことのある主婦層)に「いまのあなたにとって最も望ましいと思う働き方をお教えください」と尋ねてみた。上位3つは、以下の通りだ。
〈短時間非正規社員/38.3%〉〈短時間正社員/32.7%〉〈フルタイム正社員/13.1%〉
短時間非正規社員とは、概ね労働力調査でいうパートと考えていいと思う。家庭の制約がある中で仕事と両立させようと考えた場合、パートを選びたいと考える層が一定数存在している。もし非正規を一掃するということであれば、このパート希望の人たちを正社員にする必要がある。その形に最も近いのが、2番目に挙がっている短時間正社員だ。
しかし、今の日本社会に短時間正社員の仕事は決して多くはない。しゅふJOB総研で短時間正社員での就業経験を尋ねたところ、「ある」と回答した人は11.3%に過ぎなかった。一方、条件さえ合えば短時間正社員で働いてみたいと回答した人は77.2%。短時間正社員をめぐる労働市場のミスマッチが厳然として存在していることがわかる。
となれば、短時間非正規社員で働く人がすべて短時間正社員として働けるようになれば、非正規の一掃に向けて大きく前進するはずだ。
しかし事態はそう単純でもない。まず尊重されるべきは、働く人自身の希望だ。短時間であっても、正社員と名がつく以上はそれなりの業務負担や組織へのコミットが求められる。もちろん短時間非正規社員でも、負担の大きい業務に従事したり組織への高いコミットが求められたりするケースはある。しかし、それが正社員という位置づけになればさらにその確率は高まるはずだ。
特にお子さんが小さいうちなどは、家庭運営の比重を高めて仕事の負担は軽めにしたいという人もいる。そのような希望を持つ人に、短時間とはいえ無理やり正社員としての働きを求めることは酷だろう。いやむしろ、短時間の勤務で正社員としての成果が求められる短時間正社員は、より難易度の高い働き方だと見なしたほうがいいかもしれない。
そしてもう一つ問題がある。そもそも短時間正社員は、正社員と見なしていいのかという点だ。