人間や犬の爪は、放っておくと伸びていくが、猫の爪は一定の長さまでしか伸びない。というのも、猫の爪は層になっており、爪研ぎをすると、外側の層がはがれ、下にある層が出てくる仕組みだからだ。
長く伸びないのに、なぜ猫にも爪切りが必要なのか。猫専門病院Tokyo Cat Specialistsの獣医師・有田早苗さんによると、爪先のとがった部分を切り落とすためだという。
「猫の爪は、外側の層がはがれるたびにとがっていきます。爪がとがっていると、カーテンやマットに引っ掛けて爪を折ってしまったり、自分の体や他者にけがを負わせる危険性もあります。爪切りは、猫と人が安全に暮らすために必要なんです」(有田さん・以下同)
また、高齢になると爪研ぎ自体をしなくなるため、はがれずに残った爪が巻き爪になり、肉球に突き刺さってしまうこともある。
「そうなると、痛みで歩きづらくなったり、化膿することも。高齢猫には特にこまめなケアが必要になります」
爪を切る道具は、ギロチンタイプとはさみタイプがある。
「切れ味が悪いと何度も爪に触れることとなり、猫も嫌がって暴れます。ギロチンタイプの方が切れ味がいいので、おすすめです」
猫は指先の構造上、肉球を押さないと爪が出てこないので、切る時はできるだけやさしく爪を押し出してから切る。
多くの猫は、前足に触れられるのを嫌がるので、後ろ足から切り始めた方がスムーズに爪が切れる。また、ごほうびとしておやつをあげながら行うのも手だ。
「爪の根元には血管があり、薄いピンク色をしています。ここを切ると出血するので、ピンク色の部分より手前の先端部分を切りましょう」
とがっている先端だけを切るイメージだという。猫への負担を軽減するためにも、素早く行うことも大事。慣れるまでは、横に倒して両手で持つ方法とお腹を上に向けて抱っこすると安定する。
猫を横に寝かせ、猫の背中と人のお腹を密着させる。この時、人差し指を左右の足の間に入れると押さえやすい。そして、猫の脇の下に手を入れるようにして、抱きかかえる。後ろ足のかかとの関節を持ってもらうと切りやすい。
1人が猫を押さえたうえで、もう1人が切る、2人態勢で行うと安全だ。押さえる時は、なるべくひじやひざの関節を持つようにしよう。
もしも誤って血管部分を切った場合は、出血部分をガーゼなどで押さえて圧迫する。通常10分程で止血できるが、万が一、出血が続く場合は動物病院を受診しよう。
「猫が嫌がった時は無理をせず、何回かに分けて切りましょう。自宅で切るのが難しい場合は、動物病院やトリミングサロンなどでお願いするのも手。いずれにしても、幼少期から爪切りに慣れさせておくことが大切です」
爪切りは難しいもの。最初はうまくいかないかもしれないが、お互いの安全のために、少しずつマスターしていこう。
※女性セブン2019年3月21日号