「フランス文化そのもの」とも称されるノートルダム大聖堂の大火事で、日本にも思わぬ余波が押し寄せた。大手旅行代理店の若手社員がぼやく。
「日本人は“世界遺産大好き”ですから、ばら窓やパイプオルガンなど“インスタ映え”する要素満載の世界遺産スポットがなくなるのは痛い。フランスのツアーの担当者はコース変更に大わらわですよ」
10連休という超大型ゴールデンウィークを迎え、欧州方面に向かう旅行商品の利用客は「4月は前年同月比で4割増」(JTB広報室)という人気ぶり。格安チケットサイトで検索しても、4月27日出発の羽田・シャルルドゴール往復の航空券は44万6060円。連休の明けた5月11日出発なら12万6060円だから、4倍近く高騰している計算だ。
ここぞとばかりに大枚をはたいた旅行者たちが“代わりになる観光スポットはないのか!”といきり立つのは無理もない話だが、代替プランがなかなかないと話すのは、現地ガイドだ。
「ノートルダムはゴシック建築の最高峰なのに、塔の屋上に上がってパリ市内を一望できた。近代建築であるエッフェル塔から見渡すのとは一味違う楽しみがあって、代え難いんです」
ちなみにフランス国内にはノートル・ダム(=聖母マリアのこと)を冠した世界遺産の大聖堂が7つもあるが、「最も近いシャルトルの聖堂でさえ、パリから80km以上離れていて車で1時間半。“別のノートルダムにしましょう”というわけにもいかない……」(前出・代理店社員)と悩みは深い。
特需に沸く旅行業界が、“延焼”の被害を受けた。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号