痛快な語り口が「談志の血」を感じさせる松岡ゆみこ氏(談志の長女)をゲストに迎えての「立川流裏話トーク」を挟み、三番手は談笑門下の吉笑。マスコミへの露出も多い彼が演じた『何時材』(「いつざい」と読ませる)は、「47年に1人の逸材」だの「53年に2人の逸材」だの「49年に13人の逸材」だの「300年に0.75人の逸材」だのがゴロゴロいる剣の道場で、誰がどの順番で強いのかを計算していく噺。
同年齢の「15年に1人」が2人いる場合、片方が引退するともう片方が「30年に1人」になる、といった屁理屈が無性に可笑しい。論理を弄ぶ新作が売り物の吉笑らしい傑作だ。
トリは談四楼門下の寸志。談四楼の元担当編集者で、44歳で脱サラして入門し、現在51歳。現代のセンスで本格派の古典を演じる師匠譲りの姿勢が好ましい。談志の十八番『黄金餅』を達者に演じた。
令和の落語界で立川流がどれだけ存在感を発揮できるか。それは孫弟子たちの活躍に掛かっている。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2019年6月7日号