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坂東眞理子と内館牧子 「気張らず生きていい」は捨てるべき

内館牧子氏と坂東眞理子氏(撮影/藤岡雅樹)

 300万部を超える大ベストセラー『女性の品格』の著者で、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さん(72才)の最新刊が話題になっている。発売2か月で5刷、8万部を突破した『70歳のたしなみ』(小学館)で、「70代は人生の黄金時代」と提唱し、高齢期に持つべきたしなみを綴ったが、その内容に大いに共感したと語るのは脚本家・内館牧子さん(70才)。昨年映画化もされたベストセラー『終わった人』(講談社)では定年後のサラリーマンとその妻の生き様をユーモラスかつ辛辣に描いた内館さんが続いて著したのは『すぐ死ぬんだから』(講談社)。70代後半の女性を主人公にした最新作は、死や老いを向こうに見据え、人生100年時代をどのように生き切るかを問うている。同世代の二人が、高齢期の生き方について語り合った。

内館:実は私、60で大病をしたんです。それまでは風邪でも病院とは縁がなかったのに、心臓の弁が急に逆流して救急車で運ばれて13時間の大手術をしまして。意識がない間に臨死体験もして、目が覚めてすぐは何とも思わなかったけれども、しばらくすると心境が変わったんです。70あたりを過ぎるとおばあさん、おじいさんがよく“生かされている”と言うでしょう。あれが私は大嫌いだったんですけど、あの時ばかりはやっぱりね…。

坂東:そこまでの体験をされたら心境だって変化しますね。

内館:えぇ。1回ああいう生死をさまよう体験をして、60や70になったら、“もういつ死ぬかわからない世代なんだ”ということはわかっていた方がいいと身に染みました。

坂東:そうなると、生き方や考え方はガラリと変わるものですか?

内館:そうでもない(笑い)。人の命はわからないといっても、わずか70で「生かされている」と抹香臭く考えて、控えめに慎ましく生きることはないと思うんです。そうではなく、悔いを残さないよう生きることを考えるのがいいと。私の場合は病気をしてから、やるべきことに優先順位をつけるようになりました。前だったら、「立て込んでいるし、この人とごはんに行くのは来月でもいいかな」なんて先延ばしにしちゃっていたところを「いや、仕事よりこの人とのごはんだわ」とか、「この会合より、母との外出だわ」という具合に。

坂東:近著の『男の不作法』と『女の不作法』を2冊同時に出そうと持ち込んだのは、内館さんご自身なんですってね。あとがきを読んでビックリしました。

内館:そうなんです、ぜひ書きたいと思って。テレビの脚本でも今まで持ち込んだことなんかなかったんですが、優先順位の上位だったんです。優先順位をつけると、やることが整理されて、したいことができるというのは幸せです。

坂東:私は大病をしていないし、まだ悟りが充分ではないかもしれないけれど、歳を取ると今日やらなくてもいいことは明日に延ばそうと、取捨選択するようになりました。

内館:そんなふうに、がんじがらめにもならなくなりますよね。

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