「何気(なにげ)に素晴らしいと思ったのがじゃがいものこだわり」と「アイダホ産報道」ニュースのコメント欄に書いた人は、「子供の時に食べたものを出す気遣いは素晴らしいおもてなし」、といった意見を続いて書き込んだ。アイダホ州は確かに全米ナンバー1のポテトの産地だが、本当にトランプ氏の子供の頃からの思い出の味なのか?「こうなっていて欲しい」という願望を基にストーリーを作り上げている。
アイダホ産報道に感銘を受けた人々は、こうした絶賛を今更取り消すわけにもいかないため、下記のようなパターンの書き込みをし、心の平静を保とうとした。
(1)だからなんだ。国産だからっておもてなしの心は変わらないよ、バカ。
(2)くだらんこと報じるな! ここで悪いのは裏取りしないマスゴミだろ。政府は悪くない!
(3)良好な日米関係と盤石な安倍政権を何があろうとも叩きたい反日マスゴミめ! 日本を陥れたいのか!
これに加え、「トランプ氏の仏頂面写真を載せ、(トランプ氏が日本に満足していない、との)印象操作を図っている」もある。私は今回の記事に対しては、「北海道のジャガイモ、ウマいからそりゃ出すだろう」や「アイダホ産って信じて損した(笑)」程度の反応になるかと思ったらジャガイモ如きでアツくなれ、むしろ「日本人は政治に案外関心あるじゃん」と安心したのである。
一方、反政権派も少数ながら同記事には反応し「こんなところでも真実を隠す現政権は実に情けない」と書く。両方が自己の主張に利用してくれて何よりである。
とはいってもネットは、関心の高い層・支持者&支持政党がある人間が積極的に書き込みまくっている実態があり、実際多くの人はそこまで政治に関心はないかもしれない。参院選では、自分に好意的な「熱量のある人」だけの意見に候補者は左右されない方が冷静に選挙戦を戦えるだろう。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2019年6月28日号