臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、イージス・アショアの配備計画を巡り、ずさんな調査が発覚した防衛省を分析。
* * *
地元住民が怒りを爆発させるのも当然だ。地上型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の陸上自衛隊新屋演習場(秋田県秋田市)への配備計画を巡る大事な説明会で、防衛省職員が頭をカックンさせるほど居眠りをしていたのだから。
頭がカクッと前に不自然に落ちたかと思うと、両足がだらしなく開いていく。半眼になるものの目は覚めない。そのまま頭が後ろにカクッ、次は右へとカクッと倒れていく。それでも職員は目を開けない。睡魔と闘うことなく身を任せてしまっているのだ。
さらに目が覚めてからの振る舞いも、地元住民の感情を逆なでした。住民の男性に「後の席の一番右のあなた、居眠りしていましたね」と指摘されても知らんぷりを決め込む。視線も上げず、悪びれる様子もない。「何を考えてんだ!」と怒鳴られても、姿勢を正すこともなく、平然とだらしなく腰で座り、椅子の背にもたれたまま。制服組の職員らが背筋を伸ばして座っている姿とは対照的で、我関せずと何かをメモしている?ようにペンを動かす。住民の声や感情に無関心としか思えない振る舞いだ。
怒鳴られても、顔を上げるでも緊張した表情を見せるでも、頭を下げて謝るでもない。住民に寄り添った丁寧な説明をしていきたいとする防衛省の姿勢とは正反対の振る舞いで、大事な場で自分が失態を犯したという意識すら感じられない。これでは、防衛省側は地元住民の理解は必要ないと思っているとさえ思えてしまう。
しかも、新屋演習場を東日本で唯一の「適地」とした調査報告書に複数の誤りが見つかったばかりのこと。そのこともあって、最初から地元住民にはネガティブな感情が渦巻き、説明会では怒号が飛び交っていた。そんな最中の居眠りだっただけに、職員の緊張感が足りなかったどころで済まされるはずもなく、「新屋ありきで配備計画が進んでいたのでは」という地元住民の不信感を、この居眠りが後押ししてしまった形になった。