女医だからこそわかることもあれば、男性の医師ゆえに患者に寄り添えることもある。中高年男性の「勃起の悩み」に60年以上にわたって向き合い続ける“生涯現役ドクター”がいる──。
ピンクのシャツにピンクのジャケット、赤い蝶ネクタイをつけた男性が、会場に集まった聴講者の前で熱弁をふるっていた。
「これまでの医学はせいぜい60歳までの医学だった。しかし今は、60歳を過ぎた人が社会に貢献し元気に暮らしていくための医学を検討する時代になってきている。医学の主な目的は『どうやって寿命を延ばすか』だが、『寿命を延ばしたあと、どう元気に暮らすか』も考えなければいけない」
熊本悦明氏は、1929年生まれの89歳。いまも現役の泌尿器科医として都内のクリニックで診療を行なう。東大医学部卒業後、1958年には東大病院泌尿器科に男性ホルモン外来を開設した、男性の性機能研究の第一人者である。
「私が医師になりたての頃は、性ホルモンについての研究といえば女性についてのものばかりで、男性についてはほとんどなかった。性ホルモンの分泌量は心身の若々しさと結びついています。私は、『男を元気にしたい』という思いで研究を始めました。その“元気度”を測るバロメーターが『エレクト(勃起)』です」
そう語る熊本氏は今なお週に1、2回は早朝勃起(朝勃ち)があるという。
◆ED治療薬だけじゃダメ