ライフ

流言・デマ・誤報の真実と影響を再検証【与那原恵氏書評】

『流言のメディア史』佐藤卓己・著

【書評】『流言のメディア史』/佐藤卓己・著/岩波新書/900円+税
【評者】与那原恵(ノンフィクションライター)

 根拠のない噂「流言」。人の口から口へと伝わり、あいまいな情報が、いつの間にか真実味をもってしまう歴史は、人間社会の誕生とともに始まったのかもしれない。新聞や放送、出版などの既存メディアに代わって、今日においては、SNSに大量に流れる流言(フェイクニュース)は、圧倒的な速度と量をもって瞬時に拡散し、ことの真実性の検証さえ到底追いつかない勢いだ。

 今日のデジタル社会において、SNSなどで流れる言説を批判する声も大きいが、しかしながら新聞も放送も出版も登場したときは「ニューメディア」であり、登場以降、「フェイクニュース」ともいえるものを一気に「拡散」させてきたこともある。

 本書は、既存メディアに登場した、流言・デマ・風評・誤報・陰謀論・情報宣伝などのメディア史を通して、その「真実」と、影響を再検証する。さまざまな流言の事例を取り上げていくが、なぜ、流言が生まれ、さらには人々に受け入れられていったのか(もしくは求められたのか)その背景を、深く掘り下げている。なぜならば、〈私たちは「流言」がある世界をまず現実として受け入れる必要があるはずだ〉からだ。

 それが、なかなか容易ではないことを本書によって教えられた。例えば、一九三八年にアメリカでのマス・パニックとして知られるラジオドラマ「宇宙戦争」がある。放送直後から全米に「火星人襲来」騒動を引きおこした、というのが通説だ。

関連記事

トピックス

映画『国宝』に出演する吉沢亮と横浜流星
『国宝』の吉沢亮&横浜流星、『あんぱん』の今田美桜&北村匠海、二宮和也、菊池風磨、ダイアン津田…山田美保子さんが振り返る2025年エンタメ界で輝いた人々 
女性セブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン