メロンをとっても、なん通りもの食べ方がある。ある日の「メロン」は「ザ・メロン」「ミルクにメロン」「ミルクにメロンの実」という3種類。「ザ」というのは和三盆蜜を使用し、素材のおいしさを最大にいかしたかき氷。「メロン好きの客」とひとくくりにせず、いろいろな客に合わせて好みの幅に寄り添う提案をしている。
さらに「もも」「すいか」「パイン」「あんず」「すもも」という夏の果物に加え、「抹茶」「ミルク」といった定番の味、「ラムレーズン」「パルミジャーノレッジャーノ」「焼きパイン」「じゃがいも」といった、一見かき氷にはふさわしくないと思われるメニューまで並んでいる。
キャラメルミルクに焼きパイン
いまは常連となった客たちは、はじめて慈げんを訪問したときの感想を「メニューを見ただけでは、どんな味なのか想像できない」「かき氷の概念がかわった」という。
「もし店が都心の一等地なら、または大きなチェーン展開の店なら、いくつかの特徴的なメニューに絞って、それを目当てに来てもらうという方法が成立するでしょう。けれど、熊谷まで来てもらうには、一品ずつに『少し角がある』くらいがちょうどいいのです」
追加注文ができない上に、遠方から来ている客も多く、ほとんどの客がふたりで3杯など、2杯以上注文する。多くのメニューが一期一会で、そのときに頼まなければ2度と出会えない。いままでに提供されたメニューは1000種類を超える。
「同じようなメニューが1週間、2週間と続くと、今度は自分自身が悶々としてしまいます。なんだか停滞しているみたいで、違うことをしたくなるのです」
◆どんな人も満足させるかき氷の仕掛け
宇田川氏の仕事は、かき氷を提供してそれで終わりではない。客の様子を観察し、しかめっ面をするお客さんなどには、時間をおいて質問し、結果をスタッフと共有する。