政府の地震調査研究推進本部では首都直下地震について「今後30年以内に70%の確率で起こる」と分析している。しかしその一方で「五輪開催時に大地震が発生した場合」の被害については全くシミュレーションしていない。
世界中から観客が訪れ、各国の代表選手を迎えるビッグイベントの開催国である以上、“最悪の事態”を想定し、対策を練る必要はないのだろうか。
◆地震を知らない「外国人」が大パニック
冒頭のシーンのように大地震が発生すれば、多くの人がパニックに陥ることは避けられない。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏が語る。
「会場は観客の密度が高いうえ、地震に不慣れな海外からの観客も多い。卓球会場の東京体育館、柔道会場の日本武道館など、築年数が経った屋内型の会場では、天井材や照明器具などの落下物も発生するでしょう。
そうなれば、外に出て危険を回避したいという心理が働くのは当然です。恐怖と不安を感じた外国人を含む大勢が一斉に出口へ殺到し、人々が将棋倒しになって死者が出る恐れがある。死者11人、負傷者247人を出した、2001年の『明石花火大会歩道橋事故』とは群衆規模が違ううえ、屋内競技場は出口が限られるため、圧死のリスクはさらに高くなる」
◆ボランティアが「避難指示を出せない」