国内

障害のある子とない子が過ごす「インクルーシブ学童」の心構え

子供たちを見守るインクルーシブ学童のスタッフが心がけていることは?(イラスト/藤井昌子)

 障害のある子とない子が放課後一緒に過ごせる場所である“インクルーシブ学童”。日々、子供たちを見守っているインクルーシブ学童『kids』の現場責任者が、吉田弥栄子さん(46才)だ。「インクルーシブ」とは、「包括的な」「包み込む」を意味する。子供たちにはあえて個々の障害の説明はせず、コミュニケーションは子供任せ。必要に応じてスタッフがサポートする。

「話せない、返す言葉がとっさに出ない、もどかしい思いを表現するためについ手が出てしまう障害をもつお子さんに対し、障害のないお子さんはまず『怖い』と思う。でも、それは普通の感情です。一緒に生活していく中で、障害をもつお子さんのいい面やかわいさに気づいたりして、子供たち自ら障害の有無にかかわらずに接するようになります」(吉田さん・以下同)

 例えば、話せない子がいる。その子の身振り手振りや表情から、「こうしてほしいんじゃないかな」 「こんなふうに気持ちを表すんだ」と自分たちが感じ、学んで、意思の疎通を図ろうとする。

「けんかがエスカレートしたらスタッフが介入します。障害のないお子さんには、『あなたの言うことは理解しているけど、返す言葉が出ないんだよ。“ごめんなさい”やわかってほしいことを、いろんな方法で伝えようとしているから見てあげてね』と。

 障害のあるお子さんにも、どう対応すればよいのかを繰り返し説明し続けます。そのうち悪いなと思ったら自分からペコっと頭を下げるようになった。常に当事者は子供。最初から手を貸すことはせずに見守る。繊細な心の変化や困ったサインを見逃さず、拾う努力をしています。支援の方法もかける言葉も一人ひとり違いますから」

 大人の発言や行動が答えになってしまっては、インクルーシブの意味がない。

 みんながワイワイ騒いでいる中にポツンとひとりで座ってる子がいても、あえて見守っていることも。すると、友達が遊んでいるのを見て笑っている。一緒に遊ばなくてもその子は楽しいのだ。

「ここにいると、どの子に障害があって、どの子にないのかわからなくなるんです。4月から新しいお子さんが入所され、この3か月で、相手のことを察することができるようになりました。お子さんたちの心が育っているのを感じます」

※女性セブン2019年8月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン