国内

あおり運転する人とあおりコメントする人、実はよく似ている

取手警察署に入る宮崎文夫容疑者(時事通信フォト)

 あおり男に向いた牙は凄まじかったが、実はこの世はあおりに溢れている。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
「あおり運転」に対する批判が盛り上がっています。話題になっている「あおり運転」の動画は、極めて悪質かつ危険かつ不愉快であり、「なんだこいつ!」という怒りの感情を刺激されずにはいられません。

 程度の差はあれ、多くのドライバーはあおり運転をされた経験があるだけに、人ごとではないと切実に受け止めているのでしょう。今回の件が、ほかのバッシング騒動と同じように「世間の一時的な憂さ晴らし」で終わるのではなく、あおり運転をするドライバーの減少、そして根絶につながることを願ってやみません。きっとつながるでしょう。

 ところで、あの動画を見て「あおり運転」のみっともなさを目の当たりにするたびに、これって何かに似ている……という既視感を覚えます。つらつら考えて、「そうだ!」と気が付きました。「あおり運転」をする人と、ネット上で勇ましい言葉を並べて「あおりコメント」をする人とは、じつは同類なのではないだろうか。

 ネットニュースのコメント欄やSNSには、不毛で醜悪な「あおりコメント」が大量にあふれています。特定の国や民族を口汚く非難したり差別したり。あるいは、少数派や女性(ときには男性)を見下したり。バッシングされている対象に得意気に石をぶつけまくるのも、立派な「あおりコメント」です。いわゆる「反体制」や「リベラル」の立場から、残念な「あおりコメント」に精を出している人も少なくありません。

 なぜ「あおり運転」と「あおりコメント」が似ていると思ったのか。直感を裏付けるために、5つの共通点を考えてみました。

【「あおり運転」をする人と「あおりコメント」をする人の共通点】

その1「そもそも相手が悪いんだから自分は何をしてもいいと言い張る」
その2「(本人の認識で)自分より弱そうな相手をターゲットにする」
その3「クルマの大きさなり時流なり『権威』を笠に着て強気に出る」
その4「極めてみっともないけど、本人だけはカッコイイつもりでいる」
その5「いかにも、自信や目標を持てない人がやりそうなことである」

●その1「そもそも相手が悪いんだから自分は何をしてもいいと言い張る」

「あおり運転」をする人は、自分では「相手が危険なことをしたから、懲らしめてやっている。自分は悪くない」と思っています。仮に相手の運転にヒヤッとさせられたとしても、追いかけ回して危険な目に遭わせてもいい理由にはなりません。まして暴力をふるうのなんてもってのほか。その程度の理屈は、誰にでもわかるはずです。

 ところが「あおりコメント」をする人も、同じ理屈で自分を正当化するのが大好き。特定の国や民族に対して、自分に都合のいい解釈で相手の落ち度をでっち上げて「だから何を言ってもいい」と見るに堪えない罵詈雑言をぶつけたり、理不尽な差別をしたりします。仮に相手に問題があったとしても、それはたいていお互い様だし、罵詈雑言をぶつけていい理由にはなりません。その程度の理屈がわからない人が、なんと多いことか。

●その2「(本人の認識で)自分より弱そうな相手をターゲットにする」

 ダメな上司や電車の中で若い女性を怒鳴りつけているおじいさんも同じですが、「あおり運転」をする人は、自分より弱そうな相手だけをターゲットにします。「あおりコメント」をする人も、日本より劣っていると思い込んでいる国(単なる勘違いだし、そもそも国と国に優劣をつけること自体がトホホ)や、現在バッシングを受けている「遠慮なく攻撃できる対象」に対して、思いっ切り肩を怒らせて強気に振る舞います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト