小売業界5位に躍進した「安売りの殿堂」ドン・キホーテ
現在、総合スーパーのユニーはドンキの完全子会社となり、2019年6月までにユニー16店を「MEGAドンキ」に業態転換。売り上げ、客数、粗利益率とも大きく伸長した。その影響もあり、PPIHの2019年6月期の連結営業利益は2018年6月期比22%増の631億円と過去最高を記録。小売業界5位に躍進した。
ユニーを売却したユニーファミマは9月1日付で傘下のファミリーマートを吸収合併。社名もファミリーマートになった。ユニーを売ってしまったのだから持ち株会社にしておく必要がなくなったわけだ。
そして、新生ファミマはPPIHへの出資比率を最大15%に引き上げる考えだ。現在は4.88%に過ぎないが、2021年8月までにPPIH株を市場から買い増すという。
実のところ、現在の出資比率では何もできない。TOBで20%強を握るという当初の考えを捨てたわけではないだろう。「株式市場で買い増すだけで、PPIHの経営に影響力を及ぼす株数を確保できるのか」(前出の大手流通のトップ)といった厳しい指摘もある。「ドンキを取り込みたければTOBしかない」(同)のかもしれない。
PPIHは9月25日付で、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ヘッジファンドなどを経てコンサルティング会社を起業したことがある吉田直樹専務が、4年の任期と最初から区切られたかたちで社長に昇格する。
大原孝治・現社長兼CEO(最高経営責任者)は、国内のすべての役職を退き、米カリフォルニア州に移住して、米国法人社長に専念するという。創業者の安田隆夫氏が国内から身を引き、シンガポールで新事業を立ち上げ成功したかたちを踏襲する。大原氏は米国に「驚安の殿堂ドンキ」を根付かせるというミッション(使命)を担っているのだ。
ファミマに話を戻す。かつて成長の代名詞だったコンビニは、今や内憂外患に覆われている。人手不足に伴う24時間営業が深刻な問題になり、コンビニ離れによる客足の減少に苦しむ。既存店売り上げの減少を新規開店で何とか穴埋めして“プラス成長”に見せてきたビジネスモデルも通用しなくなり、“コンビニ6万店飽和”説が本気で語られ始めた。
ファミマの首脳は「存在感のある流通グループを作り、PPIHをポートフォリオに組み込むことで事業の多角化を図る」ときれいごとを言っているが、総合商社間、はっきり言えば三菱商事vs伊藤忠の川下(小売り)の覇権争いで勝利するための切り札として、ドンキがどうしても必要になる──ということなのではないのか。
「デサントをTOBで完全支配することに成功した岡藤会長兼CEOが株式市場でPPIHを少しずつ買い集めることに満足できなくなるかもしれない」(兜町筋)と見る向きも多い。
いずれにせよ、ファミマはドンキとのコラボ店「ファミマドンキ」から得られた“果実”を全店に行き渡らせていくだろう。ファミマのレジ横で、ドンキ名物の「焼き芋」が普通に売られる日も、すぐにやってきそうだ。