時代劇の悪代官役や刑事ドラマの悪徳刑事役などで活躍する俳優・船戸順(80)も、50代後半で発症した肺気胸の手術後、うつを発症した。その際の妻のサポートについて、過去にインタビューでこう語っている。
〈何よりよかったのは追い打ちをかけられなかったことでしょう。(中略)病気降板などをしてきて、妻から「これからどうするの」というようなことを一度も言われたことがない。だからこそ、こうして現役でやれていることが、ものすごくうれしいですね〉(『読売ウイークリー』2008年11月9日号)
同様に「健康のために〇〇をしたら?」などとアドバイスすることも禁物だ。術後うつ、退院うつを発症した家族との“適切な距離感”は難しいが、NPO法人うつ・気分障害協会代表理事の山口律子氏はこう指摘する。
「『困ったらいつでも声をかけて』という程度がちょうどいいでしょう。先回りして何かをしてあげるのは、過保護・過干渉になって、本人はかえって心理的な負担が増えてしまいます」
家族だけで抱え込まないことも重要だ。主治医や精神科医への相談のハードルが高いと感じたり、本人が受診に抵抗感を感じるケースもある。そうした場合は、公的機関の相談窓口も頼りになるという。
「意外に知られていませんが、地域の保健所や保健センター、都道府県・指定都市に設置されている精神保健福祉センターなどの公的な相談窓口では、月に1度『こころの健康相談』を行なっています。各自治体のホームページなどで開催日時などの詳細が公表されているので、一度利用してみてもいいでしょう」(前出・山口氏)
※週刊ポスト2019年9月13日号