国内

「嫌韓」という病 改めて考えるメリットとデメリット

日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典に出席した文在寅大統領(AFP=時事)

 世の中の「分断」が進んでいると言われる。時には冷静かつ客観的な分析も必要だろう。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 口角泡を飛ばして主張なさっている方々も、今の日本のこういう嫌な雰囲気を良しとしているんでしょうか。「さすが日本、たいしたもんだ」と思っているのでしょうか。あるいは、目先の快感の追求に忙しくて何も見えていないのでしょうか。

 お気づきのとおり、いつの間にか日本には「嫌韓」という恥ずかしい病が広まってしまいました。なかでも「右でも左でもない普通の日本人」を自称しているような人が、とくに罹りやすいようです。この病のウイルスはかなり強力で、いったん罹ってしまうと簡単には治りません。本人は自分が病んでいる自覚がないので、ウイルスを巻き散らかして周囲を巻き込んだり、悪化して後戻りできない状態になったりします。

 罹りやすいタイプの人は読解力に難がある傾向も見受けられるので、念入りに申し上げます。病だと申し上げたいのは、隣りの国に対して憎悪を募らせ、悪口を言わずにいられない「嫌韓」という行為です。病に罹っている方の中で、早とちりして喜んだ人がいたとしたら、赤っ恥をかかせてすいません。

 ウイルスの影響を受けるのは、個人だけではなくメディアも同じ。主義主張や節度のようなものはいったん横に置いて、そういう人が喜びそうな記事や番組を作ればウケるかもという誘惑に、ついつい負けてしまいます。なんとも恐ろしいことです。

「嫌韓」という病がいかに厄介でいかに残念か、すでに罹っている人にはピンと来ないかもしれません。それを考えるために、まずは「嫌韓」に染まったりそういう発言を繰り返したりすることでどんな「メリット」があるのか、あえて着目してみましょう。

●「嫌韓」という病に罹ってしまうことによる5つの「メリット」

その1「どんなにダメな自分でも『みんなが言っているから』という虎の威を借りて、とりあえず『強い自分』になった気になれる」
その2「相手の側に非がある前提で非難することで、自分がやっていることの醜さから目をそらしつつ攻撃欲を満たすことができる」
その3「ネットを見渡せば、『嫌韓』を肯定してくれる手前味噌で薄っぺらい言説が蔓延しているので、安心感や連帯感が得られる」
その4「結局は何らかの意図で流された情報に踊らされているだけなのに、『自分は無知な愚民どもとは違う』と選民意識を抱ける」
その5「身近な国や民族をとことん悪く言うことで、自分や日本の体たらくから目をそらして、かりそめの自信を持つことができる」

 ああ、なんてタチが悪いんでしょう。人はそもそも弱い生き物だし、ここ数十年の日本は自信も経済力も未来への希望もすっかりなくなって、ウイルスが蔓延する条件がそろっていたのかもしれません。それにしても、こんなわかりやすい病にまんまと罹って、こんな恥ずかしい「メリット」に溺れてしまう人が多いのは、じつに情けないことです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン