芸能

美しすぎる木村文乃の「肉体派熱血刑事」 体当たり演技の見所

番組公式HPより

 視聴者が持つイメージを良い方向に裏切る芝居ができるか。役者の技量が問われるところである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 これまでの刑事ドラマの印象と、何かが違う。『サギデカ』(NHK総合土曜21時)のゾクリとくる不思議な魅力はどこから発しているのでしょうか? 主人公は……がむしゃらかつ綿密な捜査をする女性刑事・今宮夏蓮(木村文乃)。バイクを走らせ犯人をどこまでも追い詰める肉体派で情熱派。その今宮が「振り込め詐欺」グループの頂上に立つ黒幕へ、一歩ずつ迫っていくという物語。

 刑事ドラマの王道は、被害を受けた側に力点が置かれ、犯人を追い詰める刑事の視点で描かれていく。ところがこのドラマはそれだけに留まらない「複数の視点」があります。

 例えば、振り込め詐欺の「加害者側」の生い立ちに踏み込む。両親が不在という過酷な環境で育った苦労、「高齢者から金を取ることは富の再分配だ」という主張、そして犯罪を成功させた時の達成感まで描く。

 一方で、大金を取られた「被害者側」が家族にその甘さを責められる姿も。そして、犯人を追い詰める刑事自身も、暗い過去を背負っていそうです。

 つまり、単純に「正義と悪」といった二項対立ではなくそれぞれが問題を抱えていて、影を落としている。だからこそ、他人の弱さに共感もできるし人間の心理を理解できる。さすが『透明なゆりかご』『きのう何食べた?』の脚本担当・安達奈緒子さんのオリジナル作品だけに、単純化されない奥行き感があり、見応えがあります。さらに、特殊詐欺の現場取材を重ねてきた複数のスタッフが制作に協力しているため、非常にリアル。

 第1話では400万円を騙し取られた三島悦子(泉ピン子)が、息子にその甘さを責められ自殺未遂してしまう。大金をとられたことより、もしかしたら悲劇的ではないかとさえ感じます。しかしこうした後日談はニュース報道を見ているだけでは伝わってこないこと。

 第2話では認知症の元高校教師(伊東四朗)北村の演技に驚かされました。目の動き、足の運び方、背中の丸め方。怒る表情、叫ぶ姿。じっくり現実を観察した上での役作りであることが、ヒシヒシと伝わってくるのです。

「認知症」と言ってもすべての記憶をなくしてしまうケースは少なくて、自尊心もあり、記憶も部分的にはっきりしている。だからこそ本人は不安にかられ、自分が情けなくなり、自信を喪失してしまう。そんな時、「あなたがいてくれてよかった」と感謝されたら? 「自分は必要とされている」と思うといかに嬉しいか。

 詐欺師はそうした老人の心理を知り尽くし、巧みに心の隙間を突いてくる。ドラマの中では北村が偽の教え子に助けを求められ感謝されとうとう地面師詐欺の片棒を担がされてしまう。「自分が求められている」ことに心酔していく老人の姿に見入ってしまいました。

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
乱戦の東京15区補選を制した酒井菜摘候補(撮影:小川裕夫)
東京15区で注目を浴びた選挙「妨害」 果たして、公職選挙法改正で取り締まるべきなのか
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン