反則が多発してそのたびにプレーが止まると、時間だけが浪費されるつまらないゲームになるという理由もある。俗っぽくいえば、やるほうも見るほうもゲームがおもしろくなるようにする役割を、レフリーは負っているともいえるだろう。平林氏が続ける。
「プレーの自由度が高いラグビーでは、競技規則の文言をあえてあいまいに書いている。それは選手が新しいテクニックを開発する余地を残しているとも言えます。新しいテクニックが広がってきたときに『それはズルいのでないか』とか、『いいテクニックだが危険ではないか』などとその都度、検証が行われ、その積み重ねでルールができているのです」
ラグビーのルールは安全を第一とし、その次に公平さを重んじる。そして、レフリーはルールに反するプレーを取り締まるだけでなく、選手と一緒によいゲームをつくっていくための役割を果たしている──そう見ていくと、ゲームがより分かりやすくなるはずだ。
レフリーの声は、テレビやラジオ中継でも聞こえてくるし、試合会場でもグラウンドに近ければ聞こえる場合がある。ラグビーの公用語は英語だが、さまざまな言語の人が戦うゲームの中では、レフリーはそれほど難しくない英語をゆっくりはっきり話している。英語が堪能でない人でも、どんな反則が起こったかぐらいはなんとなくわかるはずだ。
選手のスーパープレーだけでなく、レフリーがどんなことをしゃべっているのか、選手とどんな会話をしているのか、そんなところにも注目してみれば、ラグビーW杯をよりいっそう楽しめるに違いない。
●取材・文/岸川貴文(フリーライター)