なかでもニュージーランド出身のトンプソンルークにとって、日本大会は日本代表歴代最多タイとなる4度目のW杯である。
「好きな町に暮らし、その国を代表してプレーする。そこが、ラグビーのいいところ。ぼくは大阪がめっちゃ好きだから」
2006年から大阪の近鉄ライナーズでプレーを続ける彼は、日本の魅力を関西弁を交えて続ける。
「たとえば、日本人が尊敬や感謝するのは人だけじゃない。日本人は、食事に感謝し、自然を尊敬する。そんな日本文化がめっちゃ好き。だから日本代表として戦いたいと思った」
日本のスクラムの要である具智元は韓国出身のプレーヤーだ。父は幾度も日本代表を苦しめた韓国代表の名選手。しかし具は日本代表としてプレーすることに迷いはなかったという。中学時代に家族とともに日本に留学した具にとって、幼い頃から日本代表は憧れの存在だったからだ。
「いまぼくは日本と韓国のファンや関係者の人たちに応援してもらっています。それがとてもありがたい。ぼくがW杯で活躍して、韓国を好きになる日本人が増えて、日本を好きになる韓国人が増えれば、と」
「ワンチーム」の理念を掲げる日本代表は、異なるルーツを持つ仲間たちとスクラムを組む。国際化が進む社会に求められる、寛容さと多様性を持つ日本社会の指針となるチームといえるのではないだろうか。
【PROFILE】山川徹(やまかわ・とおる)/1977年生まれ。山形中央高校2、3年時に全国高校ラグビーフットボール大会に出場。新刊『国境を越えたスクラム』(中央公論新社)が話題。他の著書に『カルピスをつくった男 三島海雲』(小学館)など。
※週刊ポスト2019年10月4日号