献身的なプレーでチームを支えるトンプソン・ルーク(共同通信社)
2人のトンガ人選手が日本代表として出場した第1回W杯以降、W杯で日本代表になった海外出身選手は増え続けた。
では、なぜラグビーの代表は国籍にこだわらないのだろうか。ラグビー独自の発想は、このスポーツのルーツに由来する。
19世紀はじめにイングランドで誕生したラグビーは、大英帝国の支配下で広まっていった。イギリスのパブリックスクールなどでラグビーをプレーしたエリート層が、世界中に派遣されたからだ。彼らは世界各地に居をかまえ、子どもを育て、ラグビーを続けた。そんな環境が、国籍よりも生活する国や地域の協会を重視する「所属協会主義(地域主義)」と呼ばれる考え方を生む。
現在は〈両親、祖父母のうち1人がその国出身の者〉あるいは〈その国に3年以上、継続して居住している者〉などの条件を満たせば、国籍と異なる代表の資格を取得できる(来年から3年居住は5年居住へと変更)。
◆父親は韓国代表
これまで9回のW杯で、日本代表のジャージを着た海外出身の選手は52人。1999年の第4回W杯(ウェールズ大会)で、日本代表を率いた平尾誠二は6人の海外出身選手を起用し、ニュージーランド出身のアンドリュー・マコーミックをキャプテンに指名した。メディアに取り上げられるたびにつく〈外国人初の日本代表キャプテン〉という枕詞に違和感を覚えた、とマコーミックは話す。
「私は外国人だから、という意識はまったくありませんでした。1人の日本代表のキャプテンとして、チームや仲間のために、日本ラグビーのためになにができるのか……。私が考えていたのはそれだけでした」
9月20日に開幕するラグビーW杯日本大会では登録メンバー31人中、15人の海外出身選手が選ばれている。そのうち7人が他国籍ながら桜のエンブレムを胸にピッチに立つ。ジンバブエ人の父を持ち、南アフリカで生まれた松島幸太朗らを含めれば、メンバーの半数以上が海外にルーツを持つチームなのである。