ビジネス

踏切事故で高まる立体交差化の要望 実現までの道のりは

立体交差化が完了した西宮駅には、阪神百貨店を核とするショッピングモールがオープンした

立体交差化が完了した西宮駅には、阪神百貨店を核とするショッピングモールがオープンした

 踏切廃止は行政も鉄道事業者も沿線住民も賛成する事業だが、その手法を巡ってはさまざまな意見が噴出する。そのために、立体交差化は着工から完了まで約20年の歳月がかかる。

 阪神電鉄の西宮駅一帯は、兵庫県・西宮市・阪神電鉄の3者によって高架化工事が進められた。1980年から2001年まで、工期を3期に分けて工事を実施。21年もの歳月を要した工事にはさまざまな配慮がなされた。

「高架化工事中の1995年に、阪神淡路大震災が発生しました。震災では、工事区間のみならず阪神線や周辺が被災しています。それらの復旧工事が優先されたので、当然ながら工期も延びました。そうした要因もあるので、ほかの立体交差化と多少は事情が異なるかもしれません」と前置きしながら話すのは、工事主体になった兵庫県阪神南県民センター西宮土木事務所の担当者だ。

 西宮駅一帯は特殊な事情を抱えているため、土木工事を施工する際は細心の注意を要する。その特殊事情とは、西宮で湧出する名水「宮水」の存在だ。

 西宮市から神戸市にかけての一帯は、鎌倉時代から現在にいたるまで酒造りが盛んな地域として知られる。同エリアは主に西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷の5つから成り立っており、それぞれの地域で美味い酒づくりを競っている。

 西宮郷は宮水と呼ばれる名水が湧き出る。酒造りに美味しい水は欠かせない。全国各地から名だたる酒造メーカーが宮水を求めて西宮に酒蔵を進出させるほど、宮水は格別の味とされる。

 そうした伝統がある酒造りの地・西宮ゆえに、貴重な財産になっている宮水を涸らすことは許されない。阪神の高架化工事では、宮水への厳重な配慮が求められた。

 そのため、阪神の立体交差化は地下化ではなく高架化が選択される。その高架化工事も一筋縄ではいかなかった。

「阪神の高架化工事では地元の酒造メーカーが主導する形で、酒造関係者や学識経験者による宮水保存調査会が組織されました。そして、宮水保存調査会が水量に変化がないか水質に異常はないかと確認をしながら工事を進めました。そのため、一気に施工することはできません。調査と確認を繰り返しながら、少しずつ工事を進めたのです」(同)

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト