気取らないつまみが酒のうまさを引き立てる
「インターネットですごい楽しいと評判の店だったんで、7~8年ぐらい前に来てみたんです。居心地の良さは評判以上でしたね。酒が安く飲める店にありがちな品のなさなんて全然ない。いつ来ても変わらずみんな笑顔。だから酒がうまい。酒はこぼさないけれど、笑顔はどうしてもこぼれちゃいますね」(50代、自称・自由人)。
「子どもの頃、お使いで醤油を量り売りのビンに詰めてもらいに来ていました。そのたびに、そびえたつカウンターの上にあって見えない大人の世界に憧れたもんです。味など知らない酒の不思議な匂いやつまみのいい匂い。それに絡んで楽しそうな笑い声や話し声が流れてくるし、どんな場所なんだろうと夢に見ていました。この年になって今、その場所で飲んでるんですからね。想像していた以上に味のある世界で、そりゃあ笑顔になりますよ」(60代、舞台関係者)。
「角打ちって、パッと飲んでさっと帰るのがかっこいいんだって言いますよね。でもここにはかっこよくない人ばっかりいて、みんなが長居してるんだ。だから僕も来られるわけでさ。誰とでも飲めて話せていつも楽しい時間ばかりが流れている。いたずらするわけじゃないけど、ときどきかっこつけて、30分ぐらいで帰ったりすることもあるけどね。ハハハ」(50代、ガードマン)。
この店のそんな花畑的笑顔に似合うのは、なんと言っても焼酎ハイボールだ。
「くせがなくて辛口。それが安くてうまい。変な波風を立てない酔い方のできる優しい酒だもの、うれしいだけでしょ。どの店に行ってもこれがあれば優先だし、家でもこいつのロング缶をいつも飲んでるんですよ」(60代、物販関係)
笑顔のままの花野さんは、「親父が亡くなって8年になるのか。これだけお客さんが喜んで来てくれるんですから、親父が力を入れていた角打ちの方向は間違っていなかったわけですよ。自分は今56歳だから、変に形を変えないで、このまんま、あと10年は続けさせてもらいますよ。いや、それ以上かな」と、笑った。