福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(写真/時事通信フォト)

 同書の著者でノンフィクションライターの齊藤真氏はこう言う。

「森山氏の存在が、この土地を異様なものにしていたことは確かです。高浜町は越前クラゲが発生する地域なので、冷却水の吸水口にクラゲが詰まるから、除去しなければならない。笑い話のようですが、そこで森山氏は『クラゲは処分せずに沖合に放せ。また戻ってくるから』と指示をしていた。それを繰り返せば延々とメンテナンスの仕事が入ってきますから。

 万事この調子で、関電から莫大なお金を引っ張ってきた。関電幹部に金品を送った意味は、毒まんじゅうを食べさせて相手を逃げられなくするという意図があったのではないか。彼が存命のうちは決して表に出てこなかった話だと思います」

 2日に行なわれた記者会見では、金品を返却しなかった理由を「(返そうとすると森山氏に)脅された」などと関電側は説明し、受け取った幹部たちは、辞任を否定。森山氏が鬼籍に入った今ならば、彼ひとりの責任にして逃げおおせるということか。

 関電に越前クラゲの処分について聞くと、「適正に廃棄処分しており、再び沖に放すような事実はない」との回答。

“Mさん”が残した毒は、そんなに容易に解毒できるものではなさそうだが……。

※週刊ポスト2019年10月18・25日号

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