10月24日に開幕する「東京モーターショー2019」(東京ビッグサイト)。大規模なクルマの祭典に合わせて、発売予定の新型車を展示するメーカーは多いが、今回、国産車で注目なのは、これまで激しい販売競争を繰り広げてきたコンパクトカーのトヨタ「ヴィッツ」とホンダ「フィット」が揃って新モデルを発表することだ。果たしてライバル対決の行方はどうなるのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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今年の東京モーターショーは、華と言われる高級車ブランドをはじめ海外メーカーが軒並み参加を取りやめてしまうなど寂しい話題が目に付くが、最初からダメだと決め付けるには及ばない。ほぼドメスティック(国内)ショーと化したことで、国内メーカー同士が激しいバトルを演じる気配が濃厚なのだ。
そもそも世界の中でも自国メーカーだけでモーターショーを成立させられる国は日本と中国くらいのもの。狭い国土に乗用車メーカー8社、大型車メーカー4社を擁する自動車大国日本ならではの光景を見せてくれることを期待したいところだ。
ショー前から興味深いものの代表格は、トヨタとホンダによる“因縁の対決”だろう。トヨタ「ヴィッツ」あらため「ヤリス」とホンダ「フィット」という、市場で激烈な販売競争を繰り広げてきたベーシックカー2モデルが、そろって新型に切り替わるのだ。
ヴィッツの第1世代モデルが登場したのは今から20年前の1999年。それ以前もトヨタは「スターレット」というベーシックカーを長年作っていたが、「旧型の一部を流用するモデルチェンジを繰り返しているうちにかえってコストが上がった」(当時のトヨタ関係者)という。
そのため、社内で「NBC(ニューベーシックカーの略)」という呼称をつけてクルマづくりをゼロベースで見直すことを決意。フランスのヴァランシエンヌ工場の竣工に合わせ、欧州のシェア5%獲得にチャレンジする新世代商品のトップバッターとしての登場だった。
欧州では「ヤリス」と命名されたその第1世代ヴィッツ、欧州でトヨタの販売台数を飛躍的に増やしただけでなく、日本でもバカ売れした。排気量1リットル3気筒エンジンの簡素なクルマだったが、欧州人デザイナーが欧州スタジオで欧州ユーザーをメインターゲットに作ったデザインは、コロッとした可愛らしさと引き締まりを両立した洗練されたもので、当時強力なライバルであった日産「マーチ」を沈めた。