国内

災害時の避難所にホームレス どう対応するのが正解なのか

台風19号により多くの人々が避難した(AFP=時事)

 先の台風は様々な爪痕を残した。避難所とホームレスの問題もそのひとつ。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

 * * *
 台風19号の暴風雨が吹き荒れる10月12日、東京の台東区で自主避難所に避難をしてきたホームレスが門前払いされるという問題が発生した。問題の経緯を、ホームレス支援団体の社団法人あじいるがブログで公開。それをネットメディアが報じると、SNSを中心に拡散され、新聞社など大手マスコミも後追い報道をし、ネット界で大きな話題となった。

 台東区は、自主避難所は区民を対象に開設したもので、同区に住所のないホームレスの人たちは受け入れることができなかったと説明した。だが、ネット上では「だったら、外国人旅行者の避難も受け入れないというのか」などと批判が殺到。新宿区に次いでホームレス人口の多い台東区なのになんたることかと、同区民である私もその無策ぶりに呆れた。

 そして、15日、参議院予算委員会の総括質疑で国民民主党の森ゆうこ議員がこの件について、「人道的に被災者の権利という基本的人権を尊重し、人間らしく避難生活を送ることができる基準がある。どう考えているのか」と問い質し、安倍総理大臣がこう答えた。

「避難所は、災害発生後に被災者の生命身体などを保護するために、被災者が一時的に生活を送るために、設置されたものであり、各避難所では避難したすべての被災者を適切に受け入れることが望ましい。関係自治体に事実関係を確認し、適切に対応していく」(NHK NEWS WEBより)。

 続いて、加藤勝信厚生労働相も閣議後記者会見で、「厚労省としては被害に遭われた方に関しては全ての方を取りこぼすことがないようにしっかり対応していく姿勢で取り組んでいきたい」と述べた(時事ドットコムより)。

 それらお偉いさん方の発言を受けてのことだろう。同日、さっそくというかようやく、台東区長が動いた。区のHPで「この度の台風19号の際に、避難所での路上生活者の方に対する対応が不十分であり、避難できなかった方がおられた事につきましては、大変申し訳ありませんでした」と謝罪した。また、「台東区では今回の事例を真摯に受け止め、庁内において検討組織を立ち上げました。関係機関等とも連携し、災害時に全ての方を援助する方策について検討し、対応を図ってまいります」とも付け加えた。

 さて、台東区はこれから「災害時に全ての方を援助する」とのことだが、そのためにどのような具体的方策をとるのだろうか。検討結果をぜひ公開してもらいたいが、もしも、同様の災害が発生した場合に全ての人を自主避難所で受け入れる、というだけだったとしたら、この問題の根本的な解決方策とはいえない。

 もちろん、相手がどんな人間であろうが、命が危ぶまれる状態から守るよう努めることは、行政の当然の仕事だ。ウーマンラッシュアワー・村本大輔の、〈ホームレスを区が受け入れないのは税金を払ってないからというツイートをみた。おれは高い税金を払ってる。それは税金を払えない人の分も負担させてもらってる。だから社会ってのは税金を払ってない人もいていい場所。税金は払える人が払えばいい。社会は誰であっても1人も見捨ててはいけない〉というツイートがハズっていたが、基本的な考え方はその通り。社会問題の解決役でもある行政は1人も見捨ててはいけない。

 ただし、である。それは必ずしも、誰もが一律にまったく同じ行政サービスを受けられるようにする、ことと同義ではない。基本的人権を尊重するにしても、すべて完全平等にとはいかない場合もあるのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン