台風19号は各地に甚大な被害をもたらした(写真/共同通信社)
何が言いたいのか。避難所が小学校の体育館だとして、その館内の同じ空間で一般人とホームレスの人たちとを一緒にしてしまったら、高い確率で新たな問題が発生すると思うのだ。たとえば、「あの臭いはなんとかならないのか!」といった文句がきっと出る。下手をしたら「うちの子が熱を出したのは、あの連中の病原菌が感染したからだ!」という苦情だって出かねない。
台東区の避難所問題について大勢がSNSで盛り上がっていた際も、人権的観点からホームレスも普通に受け入れて当然だとする声が数多くあった一方で、臭いと衛生面から受け入れることはできないとする声も同じくらいたくさん見られた。この件に関しての意見はそれら二方向に分かれていて、人権派と現実派の対立みたいなことになっていた。
私も現実派の言いたい気持ちがよくわかる。ホームレスにも人権があることに何ら異論はなくても、避難所で彼らの放つ形容のしがたい異臭に耐え続けられる自信がない。たまに電車で隣の車両だけがガラガラだからそちらに移動してみると、他に誰もいない座席にぽつんと一人、ボロをまとった彼が座っていることがある。ちょっと近寄っただけでも臭いがぷんぷん。差別とか蔑視とかそういう次元じゃなく、生理的にたまらなくて自分も別の車両に行ってしまう。
ホームレスの中には身なりのきちっとした人も少なからずいる。だが、異臭ぷんぷんの人もこれまた少なからずいるのであって、彼らが避難所にやってきた場合は、一般人と同じように受け入れるわけにはいかないだろう。かといって、追い返すのも違う。嵐の中、助けを求める家なき人々を行政が門前払いしてはならない。
具体的な対応の仕方としては、その避難所にシャワー室があるのなら、石鹸とシャンプーとタオルを渡して全身をきれいに洗ってもらい、着替えも一揃い提供すれば問題はほぼ解決するはず。いや、緊急時にそこまで丁寧に対応する余裕がない、避難所にシャワー設備などないという場合は、「棲み分け」をしてもらうしかない。体育館なら、たとえば付設されている倉庫にホームレスの人たちを案内する。同じ館内で一緒にではなく、物理的に区切られた別部屋に隔離させてもらう。
それを差別だと批判する人もいるかもしれない。だが、人権を重んじて人皆等しく受け入れた結果、異臭騒ぎでホームレスの人がみんなから問題人物とされるよりか、ずっと人道的だと思う。それよりも問題なのは、受付の段階で別部屋に行ってもらうかの線引きをどうするかであろう。住所のない人を全員そちらに案内する手もあるが、先述したように、ホームレスの中には身なりのきちっとした清潔好きもいる。その人たちを、異臭ぷんぷんの人たちと一緒に狭い別部屋に押し込めるのは、あまりに無神経すぎる。
これは難しいことだが、完全なマニュアル化はできないので、受付担当者の判断に委ねるしかない。担当者が「この人の臭いはきつすぎる」と思えば別部屋に案内する。そうできるだけの裁量を現場に与える。担当者は役人だから、こういう「あいまいな」仕事には抵抗があるかもしれないけれども、現場っていうのはそういうものだ。
以上は、災害時のホームレスの緊急避難について、素人が考えた一案にすぎない。担当行政は、ホームレス支援団体などの「専門家」にも相談し、より現場のリアルに即した実践的方策を編み出してほしい。