読売系列の報知からすれば、大きく報じたくない案件ではないだろうか。しかし、自社にとって不都合なニュースはある意味、新聞が試される時でもある。報知が今回の件にきちんと言及する姿勢を見せれば、読者からの信頼は高まるはずだ。
今回のニュースに色めき立った様子が窺えるのが、阪神寄りのデイリー、中日寄りのトーチュウである。
トーチュウは見出しに唯一“不倫疑惑”の文字を踊らせ、退団の前に“電撃”を付けている。前述の4紙と異なり、文章の最後に〈7年ぶりの日本一奪回を目指すチームへの影響は避けられそうにない〉との見解を綴った。
デイリーは6紙の中で最も大きく紙面を割き、詳細に報じた。デカデカと【鈴木コーチ退団 巨人激震 6年ぶり「日本シリーズ」直前に…】と見出しを打ったかと思えば、【「鈴木コーチ不倫疑惑」デイリー新潮報じる】という囲み記事まで掲載。さらには、鈴木尚広の来歴を綴る【WHO’S WHO】というコーナーまで設ける力の入れ具合だ。
文中では〈鈴木コーチの退団を知らされた各選手は、緊張ムードを漂わせながら調整した〉という他紙にはない独自の情報を盛り込み、文末では〈大塚球団副代表は「鈴木コーチが(若手を)育ててくれた部分がある」と話した〉と副代表のコメントまで記載。阪神記事並みの充実度を見せたのである。
“巨人・鈴木尚広コーチ退団”という同じ情報でも、スポーツ紙によって報じ方はこうも違う。そして意外や意外、デイリースポーツが巨人記事で群を抜くこともある。
●文/岡野誠:ライター・芸能研究家。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)が話題。同書では、1994年2月17日の田原俊彦の長女誕生記者会見前後のマスコミ報道を事細かに調べ、当初『ビッグ発言』が問題視されていなかったことや過剰なバッシングに至る詳細過程を綴っている。