《昨晩シャンプーしたら、ごっそり毛が抜けた。先生は私の使っている抗がん剤は抜けないと言っていたけど、そんなことはないんだ―毛がなくなることを考えたら涙が止まらなくなった。英司が一生懸命なぐさめてくれた。つらい思いさせてごめんね。ウィッグをつけて、出かけられるように、気持ちを切り替えるからね。このつらい日々、もう逃げ出せないもんね。英司、私を支えてください》
《私の前には、もう死ぬことしかないのかなあ。体力がなくなってきて、ベッドで横になった時、このまま死んでしまうのではないかと、体がスカスカになったような気持ちになる。 まだ英司を置いていけない。というより、今や英司がいなくては、私は生きる張り合いが持てない。今回は抗がん剤の吐き気は強く抑えられているが、手のこわばり、震えなど別の副作用もある》
《自分のガンに向き合うことがつらいので、このノートへの書きこみもしなくなってしまった。でも、いつ、再発・転移して、動いたり考えたりできなくなるかもしれないから、伝えたいことは書いておかなくてはならないのだろう。
以前にも書いたけれど、葬儀は家族葬でお願いします。英司のことだけが心配。しっかり生きてね。私は、本当に優しく看てもらっているから、私がいなくなったら、好きなように生きてくださいね。みんなも英司をフォローして、幸せに生きられるように、力をかしてください》
《抗がん剤治療8回目。髪の毛も少なくなってきたし、しびれも強いし、気分の悪い日もあるけれど、もっと生きていたいから頑張るよ》
《今日は抗がん剤8回目の点滴をして、5日目。しびれ、耳鳴り、体の中が自分のものではない不快感…副作用はたくさんあるけれど、耐えられない副作用ではない。治療することで、少しでも延命ができるなら、もっと生きたい。もっとあなたと楽しい日々を過ごしたい。子どもたちとも、一緒にいたい。そんな気持ちになっています。頑張って、生きたいよ》
《東日本大震災から5年。5年前の今日、あなたは平塚まで仕事に行っていました。大震災が起きたのだと知って、夜中に1人でいることがこわくなり、朝までなんとか過ごしました。
命は、紙一重。命が今あるということは、「運」としか考えようがないですね》
《高峰高原への旅も無事に行けました。7月下旬には、体調が悪く、無理かなぁと不安だったのですが、あなたとまた旅ができて、本当によかったです。あなたには、心から、ありがとうと伝えたいです。一緒にいられて、幸せです。たとえ身体がなくなっても、私は、あなたと一緒に、ずっといますから、ずっと忘れないで、いろいろなところに連れて行ってくださいね。
小春のことも心配だけれど、あなたがいれば、小春は生きていけるから、よろしくお願いしますね》