国内

入試制度、五輪競技地 変更に至る経緯があまりに軽々しい

記者団の取材に応じる小池百合子東京都知事(写真/時事通信フォト)

 体験取材を得意とする“オバ記者”ことライター野原広子(62才)が、世の中気になることに、思いのままに提言する。

 * * *
 つい先日、私は東京郊外のとある倉庫で、大手予備校のアルバイトをした。仕事は、テストの答案用紙の袋詰め。私は物理の答案用紙を担当した。

 袋詰めだから、答案用紙をじっくり見ることはないし、見慣れない単位や数字ばかりの用紙は、私にとって暗号でしかない。

 でも、それらが醸し出す雰囲気は確実にある。用紙を揃えて袋に入れる間、ホンのちょっと、チラリと目にするだけなのに、そこには、高校生たちのさまざまな感情が凝縮されている。

 ある用紙からは「漲る気迫」が(字や数字が堂々としている!)、ある用紙からは「今さらながらの後悔」が(文字が薄くて小さくて、いかにも自信がなさそう…)、ある用紙からは「諦め」が(高校名・氏名しか書かれていない!!)―という具合に1枚1枚に表情がある。繰り返しになるけど、アルバイトの私に、用紙の中身を見る権限はない。作業の合間にチラリと目に触れるだけだ。なのに、18才の彼らの感情がほとばしっている。そう、予備校のテストとはいえ、彼らにとっては一大事なのだ。

 ちょうど、そのタイミングで、大学入学共通テストの英語民間検定試験活用が延期されたニュースに接した。なんとも腹立たしかった。自分は受験生でも何でもないし、受験を控えた親戚がいるわけでもない。でも腹立った。

 その感情のもとには、民間試験活用を実施しようとした側の無責任で覚悟のない姿勢がある。

 このやり方には無理があり、平等性に欠けることは、教育現場を中心に各所から、当初からずっと指摘されてきた。にもかかわらず、萩生田光一文部科学大臣は「やる」と言い切っていた。

 なのに、自らの軽率な発言に批判が集まり、それが安倍政権そのものに飛び火しそうになるや、いともあっさりと寝返った。萩生田某の翻意の底に、受験生への憂慮なぞ感じられない。親や学校、塾等の現場を混乱させたことに対する申し訳なさも感じられない。安倍某(やその周辺)への気遣いしかないように思う。それがなんとも腹立たしい。

 高校生には高校生の生活がある。試験に向けて必死で準備してきた人も、不利を意識して希望校のランクを下げる決断をした人もあろう。彼らにとっては人生の岐路となる重要なタイミングだったかもしれない。なのに、政府や役人の勝手な都合で、当事者不在のうちにやり方が一方的に変えられてしまう。あまりにひどすぎやしないか!?

 倉庫のやや暗い電灯の下、高校生たちのさまざまな感情が詰まったたくさんの答案用紙に接したことを思い出すにつけ、振り回されるばかりの彼らをかわいそうに思う。

 東京五輪のマラソン会場の変更だってそう。

「マラソン会場は札幌。これは決定事項です」と、国際オリンピック委員会(IOC)が一方的に通知してきて、東京都はそれに従え、という。蚊帳の外に置かれた形となった小池百合子都知事は、そりゃあ怒るわよ。

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
2週連続優勝を果たした 竹田麗央(時事通信フォト)
女子ゴルフ 初Vから連続優勝の竹田麗央(21) ダイヤモンド世代でも突出した“飛ぶのに曲がらない力”
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン