「昔から甘いものに目がないのですが、半年ほど前に大好物の羊羹を食べても味がしなくなってビックリしました。それ以降、菓子はもちろん、普通の食事のメニューも味を感じず、すっかり食事への意欲が失せて体重が5キロ減りました。家内の勧めで耳鼻科を受診すると、『亜鉛不足です。何かお薬を服用してませんか?』と尋ねられてまた驚いた。かかりつけ医に言われて欠かさず飲んでいた、高血圧の薬が原因だったんです」
こうした例は珍しくないと笹野氏が続ける。
「降圧剤やコレステロール低下薬、解熱・鎮痛薬、睡眠薬といった幅広い薬剤には、味覚のセンサーの役割を持つ細胞を壊し、味を感じにくくさせる副作用があります。また薬の摂取が唾液の分泌を減らし、味覚が鈍くなるケースもある。先に述べたように味覚の衰えが心筋梗塞や脳血管障害につながるリスクがあり、食に興味が持てなくなると栄養不足になる危険もあり、薬の多い人はかかりつけ医などに相談しましょう」
※週刊ポスト2019年11月22日号