酒乱の屑屋が半次を脅しつけて二人の立場が逆転したところで終わらせず、死骸の髪を手で引きちぎり、骨をボキボキ折って樽に詰め、焼き場へ運んでいく。途中で死骸を落とし、それを拾いに行って泥酔した願人坊主を連れ帰り、火の中へ。火だるまになった願人坊主が「アチチッ!」と飛び出すのを見て「らくだの奴、何やってんだ?」「かんかんのうを踊ってるんだ」でサゲ。これは志らくオリジナルだ。
談志の『らくだ』をイリュージョン落語として進化させた志らくの凄味は、売れっ子タレントになっても何ひとつ変わっていない。むしろ売れたことがプラスになっている。それを証明する渾身の一席だった。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2019年11月22日号