Wエースの継投で勝つのは、今夏の甲子園を制した履正社(大阪)にも通じ、2番手、3番手の投手を先発に起用し、後半にエースがマウンドに上がるような戦い方は、今春の選抜で準優勝した習志野(千葉)など、ここ最近のトレンドでもある。
「私の中で野球というスポーツは、終盤になって相手も必死に食らいついてくる中で、急にスイッチを入れてマウンドに行かなければならないリリーフ登板の方が、より難しいと思っています。エースを後半まで温存するのはそうした目的もあります」(高橋監督)
昨年、春夏連覇を達成した大阪桐蔭の西谷浩一監督も、今秋の近畿大会の準決勝に臨む前に、選手に「(大阪桐蔭が)強い代というのは、必ず先発ピッチャーが2枚、あるいは3枚いる」と告げ、決勝ではエースが6回7失点と打ち込まれると、終盤は成長を期待する1年生投手を次々と起用した。全国より中学時代から名を馳せた球児が集まる大阪桐蔭だからこその贅沢な起用法にも思えるが、飛び抜けた怪物投手がひとりいるだけでは、勝ち抜けない時代が到来していることは、強豪校の関係者の間ではもはや常識だ。
神宮大会では2回戦で中京大中京に敗れたものの、バントやスクイズなど、細かなサインを駆使して甲子園51勝を挙げてきた明徳義塾の馬淵監督も、「スタイルチェンジ」を口にしていた。
「これからは、ビッグイニングを作るようなチームしか甲子園を勝ち上がっていけない。だからあえてこれまではバントで送っていたような場面でも今大会は打たせたりしました」
次々と投手が投入される時代は、畳みかける打力が勝敗のポイントになると馬淵監督は予見しているのだろう。
間もなく、高校野球の新時代が幕を開ける。