禁止されていない自治体でも、ある先生は校長から「『SNSの投稿はくれぐれも気をつけて』と言われている。事実上、SNSはやめろという意味だととらえている」と言う。「若手の先生など使っている人や詳しい人もいるが、少数派では」。
「先生方のSNSトラブルはよく聞くので、退職するまでガラケーのつもり」と別の先生も言う。「ガラケーでもLINEはできるので家族だけでやり取りしているが、それ以外の人とはつながろうとは思わない」。ただし、ガラケー版LINEは2020年3月に終了とされており、それ以降は連絡には他のツールを使わねばなら なくなるだろう。
もちろん、教員だからといってSNSの利用が絶対に禁止されるわけではない。しかし、前述のように自治体や学校によっては教員のSNS利用を禁じているところもあり、自主的に利用しない教員は多い。一方で、「校内で起きるトラブルはSNS絡みのことも多く、指導しなければいけないのにわからないので難しい」と多くの先生が言う。
◆誰でも見られるTwitterに投稿して大問題に
メッセンジャー機能が主体のLINEだけでなく、ネットに繋がれば誰でも見られるSNS周辺でも教職員が関わるトラブルが起きている。
2017年には、横浜市の公立中学校教師がTwitterに投稿したことで問題が起きた。「今日、新クラスが決定した。自分の思うようなメンバーにならず悔しかったけど、気持ちを新たにやっていくしかない」と全体公開でツイート。投稿を生徒が見てしまい、「先生に望まれていないクラスだ」と声をあげ、投稿が広まってしまった。結局、この教員は担任業務から外されてしまうことに。
Twitterは鍵をかけなければ、誰からでも投稿が見られる。児童・生徒が見て不快に思うことを書けば、子どもや保護者に見られて問題になるのは当然と言えるだろう。問題は教員になった後だけでなく、「学生時代に作ったアカウントを子どもに教えてしまい、投稿していた写真が問題になった若い先生もいる」という。他にも、教員が生徒と撮った写真をFacebookやInstagramに無断で公開して問題になった例もある。
「教育実習生が来たときには、『子どもと写真を撮ったり、校内で写真を撮ってSNSにあげることは禁止』という指導をしている。そうしないと勝手に投稿してしまい問題になることがある」と実習の指導を担当する先生たちから何度か聞いたことがある。
教師のSNS利用は難しいが、問題となるのは投稿ややり取りする内容次第だ。個人情報や守秘義務違反、児童・生徒たちを傷つける内容、教師としての信頼を損ねる内容などが含まれていると大問題となる。だが、気をつけるべきは投稿の目的が不適切であることであり、手段であるSNSではない。
SNSそのものには、授業への活用など、今後の新しい教育ツールとして期待される側面もある。それになにより、子供たちにとってSNSは日常のコミュニケーションに欠かせないものだ。それゆえ、LINEやTwitterを利用したいじめ相談窓口が拡大しているのだ。
そういった社会の情勢を考えると、教職員にSNS利用を禁じたり、使わないように指導するのは時代に逆行しているのではないか。道具だけ禁じても、不適切な目的を遂げようとする人はいなくならない。不祥事への対応は、本当に問題なのは何なのか、という点から対処すべきだろう。
教育現場ではいま、子供たちにSNSの適切な使い方を指導することが求められている。前述したように、生徒間のトラブルにはSNS絡みのものも多い。それなのに、肝心の教員がSNSを理解できていないと困ることが多いはずだ。教職員に対して単にSNSの私的利用を禁止するのはデメリットが多そうだ。定期的にそのときの状況に合わせたSNS研修を受けたり、SNSについての学習ができるようにするのが、教育現場らしい解決方法だろう。