悶々と2か月ほどを過ごす中で出会ったのが、「とよなが動物病院」の豊永眞弥獣医師だった。豊永さんは、多葉さんの考えに大いに共感し、刺激が弱く、犬が嫌がりにくい柔らかい素材を使って歯ブラシを作ってみることを勧めてくれたという。
そこで、多葉さんが注目したのは、ヤギやウマの天然毛だった。業務が終了した夜に職人とともに試作を行ってみたが、通常、ナイロン製の歯ブラシを作っている機械ではヘッドへの植毛がうまくいかなかった。
というのも、ナイロンの毛は直径が0.2mm程度で一定のため、1つの穴に対して植える本数が計算できる。しかし、天然毛は直径が不揃いで柔らかすぎるため、植毛のために決められた一定数を取って運ぶことが困難なのだ。部品を0.01mm細かく削って調整したり、一部は手作りしたりして試行錯誤を続けたところ、ようやく安定して生産できる技術が確立された。
細くて柔らかい毛がみっしり埋まっている歯ブラシは、歯磨き効率もアップさせることができる。歯茎に当たっても愛犬が嫌がりにくいことに加えて、歯周ポケットにも入りやすく、少ないストロークできれいに歯が磨けるのだ。
「最初は嫌がりますので、まずは口に歯ブラシを当てることから始めて、根気強く、だんだんと慣れさせていってほしいです」と多葉さん。
愛犬の健康と長生きは、一緒に過ごす家族にとっても重要な課題。ぜひ、歯磨き習慣をつけてほしい。
※女性セブン2019年12月5・12日号