どうだろう。そう、話がリアルで、合理的、説得力があるのだ。ちなみに、だから死体を山に埋めるのは不可能で、やるなら潮の流れのある海に沈めるのがスタンダードなのだという。……と知って、役に立つわけではないけれども。
懲役太郎チャンネルは、こうした犯罪や刑務所やヤクザ組織などに関するネタを中心に、経験者ならではの視点から知ってナルホドという語りを続けている。長時間の生配信も定期的に行っており、ファンたちは「懲役わー」という挨拶でコメント欄に書き込みをしている。この分野の動画づくりの草分けとして、今後もより人気を高めていくに違いない。
さて、もう1人、懲役系ユーチューバ―の紹介をしておきたい。チャンネル名は「カベパパの闇テラス」だ。今のコンセプトで本格配信したのは今年の9月からで、まだ始まったばかりの番組。執筆時現在のチャンネル登録者数 2610人である。
チャンネル運営者で演者でもある「カベパパ」は、実名こそ伏せているが、住まいが北九州市であること、派遣社員としてコールセンターの仕事をしていること、息子さんが1人いる父子家庭であることなどなど、個人情報を大胆に公開している。高木ブー似の素顔も隠すことなく見せている。年齢は50歳。この番組の動画は、懲役太郎へのオマージュということで、「前科三犯、460番、カベパパです」の決まり文句から始まる。その文句だけはダミ声だが、あとは50歳にしては若々しい、優しげな口調で話をする。
カベパパは、チャンネルの概要欄にある通り、銃砲刀剣類所持等取締法違反と覚せい剤取締法違反で、それぞれ宮崎刑務所に3年、福岡刑務所に1年6月服役した経験を持つ。その他、腰の病気から左足がマヒしており、身体障害1種3級で車椅子生活をしていることも明かしている。また、統合失調症の診断で精神障害2級であることも公表している。
そんなカベパパの動画に一貫しているのは、防犯と再犯防止のために配信活動をしているという理念だ。薬物依存者が動画を見ていたら、覚醒剤に手を出すとすべてを失うからやめようよ、という注意を喚起する。犯罪防止の観点から、刑務所に務めたことのある人のリアルを伝えることによって、その服役期間がいかに無駄なものであるか理解してもらおうとする。
このところ連夜のように行っている2時間以上のライブ配信でも、コメント欄のすべてを読み上げ、マジレスも冗談返しもなんでも返答している。視聴者に日本一近い存在であるユーチューバ―を目指しているからだ。また、番組の視聴者が困ったとき、辛くなったときに、すぐ相談にのれるよう、LINEのオープンチャットを設置し、誰でも入室できるようにしているのもカベパパらしい。
この番組でこれまでバズったのは、女子刑務所に服役経験のある女性を招いたインタビューだ。これからも元受刑者、元薬物依存症者、元刑務官など、つながりを見つけてどんどんインタビューをしていきたいという。まだ本格スタートしてまもないチャンネルであり、これからどう進化していくか楽しみだ。
私は「ハイサイ探偵団」などエンターテインメント系の番組も好んで視聴しているが、懲役系番組のようなところも覗いてみると、家に居ながらにして異世界のリアルを知ることができて、人生の幅が広くなったような気になれる。今回は2つの番組を紹介したけれども、何かピンと来るところがあったら是非、実物を視聴していただきたい。