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自己肯定感が低い若手社員には「失敗体験」が欠けている

◆承認されると自己肯定感が高まる

 では、自己肯定感を高めるには何が必要か? 最も大切なのは成功体験である。成功すれば自分の存在を肯定できるし、自信が持てるようになる。

 しかし日本人の場合、それだけでは十分ではないようだ。自己肯定感と関連が深い自己効力感(平たくいうと「やればできる」という自信)について、アメリカでは能力の高さを示す外的な成功によって得られるのに対し、わが国では単に成功するだけではなく、それが承認されなければならないという研究がある(『無気力の心理学』波多野誼余夫・稲垣佳世子著/中央公論社、1981年)。

 実際に私が複数の企業等で行った実証研究では、上司から褒められたり認められたりすると自己効力感が有意に高まることが明らかになった(拙著『承認とモチベーション』同文舘出版、2011年)。

 しかし長期的視点に立つと、もう一つ不足しているものが見えてくる。近年は学校でも職場でも、「褒めて育てる」教育に力を入れている一方で、パワハラや行き過ぎた指導が社会問題化するようになり、叱ったり厳しく注意したりすることが少なくなった。

 また成功体験の大切さが強調される反面、失敗させると自信を失うのではないかという気遣いから、失敗しないように周囲が手厚くサポートする姿が目につく。

◆負のフィードバックも必要

 それでは、本当の自信にはつながらない。いつも褒められてばかりだと、「期待に応えなければいけない」というプレッシャーを感じるようになる。失敗した経験がないと、「いつか失敗するのではないか」「失敗したらどうしよう」と失敗を極端に恐れるようになり、失敗のリスクを伴うことには挑戦しなくなる。

 また対人関係でも自分が傷つくことを恐れて他人と関わったり、自己主張したりすることを控えるようになり、それが高じて引きこもりになる場合もある。そして冒頭の例のように、一度失敗しただけで自分のすべてを否定されたように受け止め、スランプに陥ってしまう。

 要するに、負のフィードバックを受ける機会が乏しいことが問題なのである。それでは本当の自分の価値や実力を知ることができない。例えていうなら氷点(0度)以上の温度しか測れない寒暖計のようなものだ。プラスもマイナスも測れてはじめて正しい温度が分かるのと同じで、よい点も悪い点も知らされてこそ等身大の自分を知ることができ、自信もつくのである。

 ただ人間は自分にとって心地よい評価は素直に受け入れるが、不快な評価は否定したがるものだ。そのため、上司がいくら本人のためと思って叱っても、反発されるか逆恨みされかねない。

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