「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
5月20日、「改正風俗営業法(風営法)」が衆院本会議で可決、成立した。6月下旬にも施行される。「悪質ホストクラブ問題」に端を発した今回の改正は、ホストクラブはもちろん、キャバクラや性風俗店といったナイトビジネスの経営者に大きな衝撃を与えた。これまでに3000件以上のトラブルを担当し、多くのナイトビジネス経営者を顧問弁護士として支える「グラディアトル法律事務所」代表弁護士・若林翔氏の著書『歌舞伎町弁護士』より、風営法のポイントを一部抜粋・再構成して解説する。【前後編の前編】
* * *
そもそも「ナイトビジネス」とは何ぞや。世間には昔から「夜の仕事」という言い方があり、最近では「夜職」という言葉もある。けれど「夜の仕事」や「夜職」が一般的にイメージさせるのは、キャバクラやクラブといったごく狭い範囲のビジネスにとどまっているように思われる。
ナイト(夜)の括りからは少しはみ出してしまうが、私にとって「ナイトビジネス」とは、主に「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」の規制を受けるビジネスのことである。「風俗営業」という表現はいわゆる性的なサービスを想起させる。だが、それは実際には「風俗産業の中の性風俗」という限定されたビジネスであって、この法律の一面に過ぎない。むしろ、風営法においては、「風俗営業」はキャバクラやホストクラブを指し、性風俗は「性風俗関連特殊営業」という名称で規定されている。我々が考え得るかぎりの遊興、娯楽を規制する影の主役こそ「風営法」なのである。
風営法は「許可」と「届出」によって、様々なビジネスを統制している。業種のカテゴリーは「風俗営業」、「特定遊興飲食店営業」、「深夜酒類提供飲食店営業」、「性風俗関連特殊営業」と大きく4つの業種が規定されている。
まずは「風俗営業」の1号から見ていこう。この1号の営業許可を必要とするのは、客に対して飲食を提供するだけでなく、従業員による「接待」を伴うビジネスを行う店だ。代表的な存在としてはホストクラブ、キャバクラ、銀座などにあるクラブ、スナックなどがある。