糠味噌を入れて炊いたさばの“じんだ煮”には、辛口の焼酎ハイボールが似合う

 冬場はおでんも人気だが、季節を問わず味わえるこの店自慢のおつまみは、さばの糠味噌炊きだ。ほんのり甘い九州のしょうゆでことこと煮込んださばを、仕上げに糠味噌をひとつかみ入れて炊いた市場の名物。常連客のひとりが教えてくれた。

「糠味噌入れて煮る保存食ですよ。昔からここの名物。さば以外にも、あじやいわしも糠で炊く。地元では“じんだ煮”って呼ぶんやけど、これつまみに1、2杯ひっかけて帰るのが最高だよね」(50代建設業)

 酒は焼酎のほか、日本酒も数多く扱っており、一合の半分(90ml)から飲めるのも評判だ。

「店主は酒への矜持が半端ない。グラスからこぼれんように表面張力でぴたっと注(つ)ぐのがもう神業よ。彼は小倉祇園太鼓も叩きよるけん、手首が強い(笑い)。友人や仕事関係者を連れてくるなら絶対ここ。おかあさんは長い付き合いだけど、義理堅い人だね。飲んでるぼくらを程よい距離で見守っていてくれるんだ」(60代公務員)

 実はこの市場には、再開発の話が浮上しているという。

「2年後には再開発がはじまるといわれています。神嶽川は何度となく氾濫していますし、古い市場やから…」

 そう店主は滔々と語る。客たちの想いをまさに壁のごとくどっしり受け止めきた『赤壁』は、「大切な居場所。家族みたいな付き合いやから…。ずっと繁盛していてもらわないと」(60代会社経営)。客たちはみんな焼酎ハイボール片手に、しみじみと赤壁愛を語る。

「これは辛口でスカッとする。家でも飲んでますよ。飲みごたえがあるから、いい感じに酔えるんだよね。甘じょっぱくてピリッと辛い、“じんだ煮”にぴたっと合うんだ。もう1本いいかな?」(40代公務員)

 北九州・小倉で戦前から連綿と続く角打ちの笑顔。味のある古い市場に笑い声を響かせながら、夜は更けていく…。

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