ライフ

「東京で儲かってるだろう」からの「奢れ」 帰省という憂鬱

帰省客で混雑する東京駅(時事通信フォト)

帰省客で混雑する東京駅(時事通信フォト)

 久しぶりに実家に帰り、地元で暮らす友人と旧交を温めた人も多いだろう。そして、お互いの暮らしぶりや仕事の様子が会話から漏れ聞こえるたび、地元を出て都市部で働く人は勝ち組という扱いを無条件にされるが、果たしてそうなのだろうかと思わされる現実がある。地域格差の意味が変わりつつあるのではという実感を感じる地方出身者たちの本音を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 年末年始休暇は、帰省の季節でもある。筆者のような田舎モンにとってみれば、金も時間もかかる帰省は大イベントだ。実家に帰り、旧友たちと会うのは楽しいのだが、そのたびに言われるのが「東京には仕事があって良い」とか「儲かっているだろう」、からの「おごってくれ」である。旧友たちもそこまで本気でないのが分かるので、笑ってやりすごしているが、しかし、東京や大阪などの大都市で働く人たちが、仕事がない、給与が低い田舎で働く人々より裕福かと言われると、首をかしげるしかない。

 都内のテレビ局に勤務する坂本直也さん(仮名・30代)は、2019年暮れ、妻と子供二人を連れて、東京駅のホームに立っていた。九州・博多から電車で一時間半はかかる大分の山奥の実家に帰省する為だ。

「博多までは大人一人2万2千円ほど、そこから実家までは4千円くらい。子供は半額ですから、家族分を合わせた往復の移動代だけで15万6千円かかるんです」(坂本さん)

 坂本さんは長男であり、また本人が孝行息子な為に、最低でも年に二回は帰省する。すると移動代だけで年30万円を超える計算だ。実は坂本さん、テレビ局勤務といっても大手キー局の孫会社に所属する情報番組のディレクターで、年収は650万円ほど。自宅は大田区内の中古マンションで月々のローンは11万円(ボーナス払いなし)、自家用車も所有しているから維持費、駐車費用も月に4万円以上かかる。妻はパートに出ており、月に10万円前後の収入がある。

「手取りは妻と合わせて月に50万円強ですが、出ていく金額を考えると、田舎で暮らしていた方が良いくらい。帰省のたびに私にたかってくる地元の友人は、年収は400万円ないそうですが、実家暮らしのためローンはなく帰省もないため、年に一度家族旅行にまで行けています。都会暮らしの方が裕福、というのはどう考えても違います」(坂本さん)

 また「田舎の方が物価は安いし、飯はうまい。都会は金がかかる」というのも、もはや幻想としか思えない。東北地方出身で、都内在住のOL・玉田希子さん(30代・仮名)が訴える。

「牛丼屋でもファミレスも、都心に住んでいる私たちが毎日のように利用する店は、今では田舎にもあります。スーパーで買う食品の値段も、そこまで違いがあるとは思えない。そうすると、食費の総額は田舎も都会もたいして変わらず、家賃や交際費ばかりかかる都会の生活は、実は田舎暮らしより不利なんじゃないかなと思うことはあります」(玉田さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
原英莉花(時事通信フォト)
女子ゴルフ・原英莉花「米ツアー最終予選落ち」で来季は“マイナー”挑戦も 成否の鍵は「師匠・ジャンボ尾崎の宿題」
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
筒香が独占インタビューに応じ、日本復帰1年目を語った(撮影/藤岡雅樹)
「シーズン中は成績低迷で眠れず、食欲も減った」DeNA筒香嘉智が明かす“26年ぶり日本一”の舞台裏 「嫌われ者になることを恐れない強い組織になった」
NEWSポストセブン
陛下と共に、三笠宮さまと百合子さまの俳句集を読まれた雅子さま。「お孫さんのことをお詠みになったのかしら、かわいらしい句ですね」と話された(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
【61才の誕生日の決意】皇后雅子さま、また1つ歳を重ねられて「これからも国民の皆様の幸せを祈りながら…」 陛下と微笑む姿
女性セブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン