帰省ラッシュで渋滞する高速道路四日市東IC付近(時事通信フォト)
エンゲル係数、家計の総支出における食費の割合は数値が高いほど生活水準が低いといわれるので、その考え方だとエンゲル係数が低い都会暮らしのほうがよい生活をしていることになる。しかし、エンゲル係数が高い地方暮らしのほうが、実際の生活は豊かじゃ無いのかと玉田さんは言うのだ。
玉田さんの年収は額面で400万円弱。実家に帰れば「都会のOL」と同級生から羨望の眼差しで見られることもあるというが、住まいは下町の古いワンルームマンションで家賃は5万5千円。独身のため交際費もそれなりにかかるし、仕事用のスーツや上着も必要だ。
「地元の友達は、建設会社の経理として働いていて、家の軽トラックで通勤し、服はジャージだといっていました。結婚もしていて、旦那の給与は私と同じくらいみたいですが、新築の戸建てを購入しています。子供もいて、のびのびと暮らしている」(玉田さん)
玉田さんは幼少期から都会志向で、高校を卒業すると東京の大学に進学。地元に帰るつもりなど毛頭なかったというが……。
「昔は“東京は楽しい”といって、ちょっと自慢ぽいこともしましたが、今ではそんな見栄もはれないくらい。旧友と飲むときは、少しだけ多めに払ったりしていますが、東京に帰ってくると地獄のような節約の日々……。帰省自体がだんだんと苦痛になってきています」(玉田さん)
筆者も全く同様の見解であり、上記二人の気持ちが痛いほどわかる。そういえば、アメリカ・シリコンバレーのIT企業に勤務する筆者の友人の年収が二千万円近いと聞いて、帰国の際にたかったことがあった。しかし、物価が恐ろしく高騰している同エリア、1LDKの自宅家賃は70万円、ラーメンを食べれば一杯二千円もかかると聞いて驚いたものである。
隣の芝生は青い、とは他人のものは何でもよく見えることを意味し、実際にはそれぞれに事情があるので、やたらにうらやむのは意味が無いことだというときに使われる言葉だ。正月休みで久しぶりに同級生と会い、色々なことを考えてしまうかもしれない。しかし、年収の多寡や住まいによって感じる他人との格差とは、我々が自己中心的な観点から想像するほどのものではないのかもしれない。