芸能

三田村邦彦が回顧する蜷川幸雄さんの言葉、「怒鳴れ!叫べ!」

三田村邦彦が蜷川幸雄の演出を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・三田村邦彦が、大人気となった『必殺』シリーズ(テレビ朝日系)の飾り職人の秀役、『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)ジプシー刑事など、寝る時間が移動中だけだった時代を振り返り、蜷川幸雄の舞台に出演したり、コメディにも挑戦したころについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 三田村邦彦は一九八二年から人気刑事ドラマ『太陽にほえろ!』に出演、通称「ジプシー」刑事を演じた。

「あの頃は『必殺』もやっていたので、台本を七冊くらい抱えていて。全て中途半端でした。

『必殺』でも出るシーンが秀の家で簪をコンコンしているのと全員が集まるのと、あと殺し。『太陽』でも七曲署内と聞き込み。もう芝居をやっている実感がなくなってきていました。

 それで『太陽』を降りようとプロデューサーに言ったら『うちはいつでも待ってるから』ということで殉職ではなく転属という扱いにしてもらいました」

 八五年、劇団青俳の先輩でもある蜷川幸雄が演出した舞台『恐怖時代』に出演した。

「そんな時に『お前さ、舞台やらないとダメだよ』って蜷川さんに言われたんです。そうなんですよね。俺、舞台が好きで劇団に入ったのに、舞台をやれてないんですよ。『必殺』を六年半でやめたのは、そういうことです。ここで舞台をやらないと、本当にダメになると思いました。

 台本を抱えて時間の余裕もなくて、寝る時間が新幹線の中──という時期がありましたから、『恐怖時代』をさせていただいた時は『ああ、これだ。帰ってきた』と思いましたね。とっても面白かった。

 蜷川さんは感情を前面に出すようにとよく言います。それが上手くできない時は『怒鳴れ!』と。たとえば悲しい感情を表現する時、セリフに感情が乗ってないと上辺だけになる。そんな時は『悲しいよ!』と怒鳴れ、と。そうすると、中途半端に言っているよりも何か届いたりするんですよね。ですから、いくら稽古しても上手くいかなくて本番に間に合わない時は、『もういい、怒鳴れ!』『叫べ!』って。それが蜷川さんの教え方でした。

 ですから、蜷川さんの芝居を見ていて怒鳴っている俳優さんを見ると『ああ、できなかったんだな──』って分かります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
センバツでは“マダックス”も達成しているPL学園時代の桑田真澄(時事通信フォト)
《PL学園・桑田真澄》甲子園通算20勝の裏に隠れた偉業 特筆すべき球数の少なさ、“マダックス”達成の82球での完封劇も
週刊ポスト
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン