広い荷室が高評価のホンダ「ヴェゼル」
まず、現行ヴェゼルの検証だが、居住区と荷室をきわめて広く取ったパッケージングは言うまでもなく商品力の中でダントツに高い評価を受けている部分で、ここは変えない可能性が高い。また、オフロードライクでないクーペSUV風味のスタイリングも好感を持たれているので、テイスト自体は踏襲してくるであろう。
いいところばかりではない。現行ヴェゼルについては、リコール以外にも散々苦労した部分があった。
「ヴェゼルは日本だけでなく、海外でも広く販売し、そこでそれなりにシェアを取ろうというクルマでした。実際、販売はしたのですが、フィットベースということがマイナスに作用して、耐久性や悪路走行で求められる強度の確保には発売後の改良も含めて手こずり、コストがかさむ一因になったんです」(ホンダ事情通)
次期型ヴェゼルが再びフィットベースになるかどうかは不明だが、東南アジアや中南米に多い、オフロードをはじめとした悪路を走るというニーズに対応するのであれば、プラットフォームを上級の「シビック」クラスに丸ごとクラスアップさせるか、それと同等の大手術が必要になる。
ところが、舗装路を日常的に走るわけではなく、オフロードはちょっぴり走れればOKというクロスオーバーSUVとしては、現行ヴェゼルの評価は世界でも低くない。とくに限界性能、緊急回避などの性能についてはかなり高く評価されている。最低地上高さえあればOKという先進国のライトユーザーをターゲットとする“ファッションSUV”にするのであれば、次期型のフィットベースで十分だ。
予想がつかないのは細部のデザイン。「N-VAN」「N-WGN」と、八郷社長就任後に少しずつ変化を見せていたホンダデザインだが、東京モーターショーでお披露目された第4世代フィットで、ナチュラル路線への回帰が完全に方向付けられた感がある。これまでさまざまな自動車メディアが旧世代の「エキサイティングHデザイン」というコンセプトに基づいたものになるという予想を提示していたが、そうなる可能性は今、かなり低くなったと言える。