「日々生活していると誰でもストレスを受けます。そんな時、脳はホルモンを分泌して心身がうまく働くようにコントロールしていますが、ストレスがかかりすぎると脳自体が弱り、さまざまな不調が表れるのです。
ストレスフルな状況を、別の作業に夢中になって一瞬でも忘れることが、効率的なストレス解消。それも“たまに”ではなく、20分くらいずつでも“こまめ”に行うのがよいのです」
高齢者はのんびり見えて、心身の衰えや家族、周囲との人間関係で大きなストレスを抱えており、意識的にストレス解消を試みることが必要だと古賀さんは言う。ぬり絵が高齢者施設でのケアに盛んに取り入れられているのも、そのあたりに理由があるようだ。
「アルツハイマー病でものの位置関係を認知する頭頂葉の機能が低下すると、自分がどこにいるかがわからなくなり迷子になったりします。こんな状態でも、絵のコンパクトな構図に向き合ってぬり絵を楽しめば、衰えた部位のトレーニングになるのです。認知症があっても、ぜひ気軽にやってみてください」
◆高齢ビギナーは手本つきを。慣れたら好きな絵を選ぶ
老親へのプレゼントとしての、高齢者向けのぬり絵の選び方を聞いた。
「最初は手本のあるものが始めやすいでしょう。ぬり絵の醍醐味は、やる気が湧いて夢中になること。理論的に考え、やる気や面白がる情動を動かす働きは、人間だけが発達している“人が人たる所以”といわれる活動ですが、それだけ働かせるのにエネルギーが必要です。 高齢者は活性化したい部分ですが、少々ハードルも高い。
そこで、手本のとおりに塗っていけば楽に成果が手に入る形にすると、グンとハードルが下がります。好きな絵柄を選ぶのがいちばんですが、浮世絵など日本画が題材のものは、輪郭線がはっきりしているので塗りやすくおすすめです」
慣れてきたら手本なしのぬり絵で、オリジナリティーを発揮。複雑な構図にも挑戦したくなれば、ますます楽しくなりそうだ。
※女性セブン2020年2月6日号