安倍首相に近い筋から辞任情報が出れば、記者たちが「官房長官交代は総理の意向」と受け止めるのは当然だろう。
さらに通常国会召集日(1月20日)の前、安倍首相と盟友の麻生太郎副総理が極秘に会談したとの情報がある。首相動静に記録はないが、麻生氏が首相の私邸をお忍びで訪ね、サシで密談を交わすことは過去にもあった。ここでも菅氏の処遇が話し合われたとされる。別の官邸中枢筋の話。
「総理と麻生さんはポスト安倍の後継者問題や解散時期、今後の政治日程などについて突っ込んだ話をしている。2人の構想では東京五輪後の政権の枠組みに菅さんは入っていない」
菅氏が追い詰められ、「辞任」への外堀を埋められつつあるように見える。政治ジャーナリスト・藤本順一氏は背景をこう指摘する。
「安倍首相が菅さんについて『国家観がない』と言っているという情報まで出回っている。“総理の器ではない”というネガキャンでしょうが、そうした批判や辞任説が流されているのは、菅さんが総理への忠誠心を試されているとみていい。
森友学園問題で財務省の文書偽造が発覚したとき、財務大臣の麻生さんは辞任せずに汚れ役を引き受けて総理を守った。今その立場にあるのが菅官房長官です。桜を見る会問題は総理の疑惑だが、麻生さんや安倍周辺は辞任説で『麻生は森友で総理を守ったが、お前は辞任して逃げ出すのか』と菅さんの去就を見極めようとしている」
菅氏が辞任すれば一連の疑惑の責任を負わされたうえ、「総理を守らずに逃げた」とのレッテルを貼られる。“辞めるも地獄、残るも地獄”の立場に立たされているといえる。それは踏み絵というより、粛清の手法だ。
※週刊ポスト2020年2月14日号