■株は剣の刃渡りのように、一つ足を踏みはずしたらすぱっと自分の体は真っぷたつになる。まさに、切るか、切られるかの真剣勝負そのものなのである。
『相場師一代』(是川銀蔵著、小学館文庫、1999年)
・是川銀蔵(投資家)1897~1992
「最後の相場師」是川銀蔵氏(写真/共同通信社)
数百億円の株取引に幾度となく成功し、昭和の兜町で「最後の相場師」と称された是川銀蔵。そんな彼が晩年自ら語った失敗談が、1978年に水面下で進めていた同和鉱業株への投資だった。
この言葉は持ち株評価額が300億円に膨らんだことで欲に迷い、手仕舞いの鉄則を破った時の敗戦の弁。それでも彼は最期まで「株ほど魅力あるものはない」と言い切った。
■最初にあったのは、夢と根拠のない自信だけ
『孫正義語録―孫氏の兵法』(孫氏の兵法製作委員会、ぴあ、2007年)
・孫正義(実業家)1957~
ソフトバンクグループを率いる孫正義氏(写真/AFLO)
たとえ赤字でも投資で売り上げを伸ばす胆力で、10兆円規模の投資会社に成長した「ソフトバンクグループ」。その長である孫が持つ先見の明の原点は密造酒とパチンコ屋で大儲けした“勝負師”である父・三憲の言葉にあった。孫は後年、自信の理由を聞かれ、尊敬する父から「“お前は俺より頭がいい”と褒められて育ったからだ」と笑ったという。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号