では、始まったばかりの2020年はどんな塩梅だろうか。さっそく調べてみた。2月16日終了時点での平地競走。オッズ1倍台の出た競走は94回。うち1着は40回、半分も勝てていない(2着16回、3着12回)。
ダントツは川田将雅騎手。27回で13勝をあげている。次点のルメールは15回で5勝、常勝のイメージ濃いマーフィーは10回で3勝だった。ちなみに4着以下22回のうち13回を上位3名が占めている。
単勝オッズ1倍台の勝率は、6割以上はあって、3着内率も相当に高いものと思い込んでいた。ファクト(数字)の積み重ねは「そんなもんだぞ」と頭を冷やしてくれる。
さて、人気馬に乗る騎手のメンタルである。
プレッシャーを感じながらも当然手を打つ。他馬の枠順やその鞍上のクセなどを勘案し、あれこれと策を練る。結果、「この作戦しかないと追い込まれていくと…」と、ある調教師は懸念を示す。考えすぎると視野が狭くなり、手綱がかたまってしまう。レースは人間の思い通りにはならない。
「マークするなら勝手にしやがれ。こっちはいつもどおりに乗る」と腹をくくれるかどうか。レース後、どんな騎乗だったかを見返すのも、楽しみの一つ。馬券を取っていたら最高だけど。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年3月13日号