ある精神科病院に、死刑執行に失敗し生きながらえた元死刑囚、幻聴に苛まれる元サラリーマン、DVに悩む女子高生らが入院する。さまざまな理由で療養する患者と彼らを取り巻く人々の「優しさ」を描いた映画『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』は、今年の日本アカデミー賞で11部門にノミネートされた感動巨編だ。
だが、現実の閉鎖病棟では、優しさとはかけ離れた虐待事件が起きていた──。
3月4日、兵庫県神戸市にある精神科病院「神出病院」に勤務していた元看護助手の和田元規容疑者(27才)と看護師5人が準強制わいせつや監禁容疑などで逮捕された。
「昨年12月に和田容疑者が別の強制わいせつ事件で逮捕され、捜査の過程で患者への虐待が発覚しました。容疑者らは“患者のリアクションが面白くてやった”と供述しています」(全国紙社会部記者)
神出病院は精神科、神経科など合わせて465床ある大規模な閉鎖病棟でA棟とB棟があり、今回の事件はB棟4階で発生した。
虐待は2018年10月から2019年9月の間に行われ、その内容は熾烈を極めた。
「容疑者らは70代男性患者をトイレで裸にして椅子に座らせ、顔にホースで放水し、ポリ容器に入れた水を浴びせたりしました。また50代男性患者と60代男性患者同士を無理やりキスさせました。その60代男性患者にはベッドで簡易的な檻を作り、長時間監禁しています」(前出・全国紙社会部記者)
いずれも発覚しづらい状態で行われた卑劣な犯行だった。被害者は統合失調症などで善悪の判別ができず、助けを求められない重度の精神疾患だった。容疑者らは仲のいいグループで、ほかの看護師がいない夜間勤務の時間帯に虐待を繰り返した。トイレや病室など被害現場には監視カメラは設置されておらず、共謀して虐待場所を選んだ可能性がある。
「容疑者たちのスマホから、男性患者同士で性器をくわえさせるなど30本以上の虐待動画が見つかりました。動画には“やべえ”“やめとけ”などと笑いながら話す容疑者らの声も収められており、彼らは動画をLINEで共有していた。警察は少なくとも1年以上、虐待が続いたとみています」(前出・全国紙社会部記者)